騎士と魔女とゾンビと異世界@異世界現代群像のパラグラフ
木木 上入
1話「いきなり激戦!」
「
緑髪の男は杖を前に振りかざし、呪文を唱えた。すると、杖から白い光線が飛び出て、緑髪の男に突進していたリビングデッドへ命中した。
「よーし……」
地に伏し、動かなくなったリビングデッドを見て、緑髪の男は税に浸っている。
「ブリーツ、ぼーっとしてないで、次よ、次!」
赤いツインテールのサフィーが、緑髪の男、ブリーツに向かって、せわしそうに言った。
「はいはい、分かってるって。そう慌てなさんな」
ブリーツが気の無い返事を返す。
「ホーリーライトなら、フルキャストじゃなくてもいけるでしょ、ノンキャストでちゃちゃっとやっちゃいなさいよ!」
サフィーは、そう言っている間に、両手に持つ剣で、リビングデッドを二体切り裂いた。サフィーはブリーツよりも大柄だが、リビングデッドはサフィーと同じか、それ以上の体格をして、二人の周りを大勢で囲んでいる。
「いや、さすがにノンキャストじゃ……ま、ファストキャストくらいでいけるっちゃいけるが。ホーリーライト!」
ブリーツの杖から光線が伸び、ブリーツとサフィーの二人を囲むリビングデッドの一帯に命中した。
リビングデッドは、先ほどのリビングデッドと同じく、地面に倒れ、動かなくなった。
「あ、ほんとだ。でもノンキャストじゃ無理だな」
ある程度技量のある魔法使いは、三つの詠唱方法を使い分けている。
一つはフルキャスト。これは三つの中で一番一般的な詠唱方法で、呪文から魔法名まで、全てを詠唱する方法だ。この詠唱方法は、詠唱時間は一番長いが、魔法の持つ力を一番引き出すことが出来る。
一つはファストキャスト。三つの中では中間的な性質を持っていて、難易度もそこそこだ。魔法名だけを詠唱する簡易的な詠唱方法で、そこそこの詠唱時間で、魔法の威力をそこそこ引き出せる。
最後はノンキャスト。三つの中では一番難易度が高く、使いこなせる魔法使いは少ない詠唱方法だ。魔法名を唱えることもないノンキャストは、ほぼ、本能で打つ方法といっていい詠唱方法だ。一部の例外を除いて、ノンキャスト詠唱をマスターするには相当な鍛錬が必要だ。しかし、魔法の威力は三つの詠唱方法の中では一番低い。短時間、小威力の詠唱方法だ。
「ホーリーライト!」
ブリーツが紺色のローブをはためかせながら、ファストキャストのホーリーライトで一体、また一体とリビングデッドを倒している。
「いやあ、やっぱり世の中、そこそこが一番だな」
「……何よ、そこそこって。またいつもの冗談じゃないでしょうね?」
「いや、こっちの話だ。詠唱時間について、頭の中で考えててな。これで論文でも出そうと思ってな」
ブリーツが冗談を言った。
「冗談じゃないけど、冗談に繋がる話だったのね……全く!」
サフィーが身を翻しながら、光り輝く剣で後ろのリビングデッドに向けて斬りつけた。リビングデッドはX字に切り裂かれ、倒れた。
「ま……ブリーツが居なきゃ、アンデッドなんて相手に出来ないのは確かだけど」
サフィーが光り輝く剣を顔の前に持ち上げ、それを見ながら言った。
サフィーの持っている剣は普通の剣だが、まるで光の棒を持っているかのように輝いているのはブリーツのかけた魔法「アームズグリッター」のおかげだ。
剣に光属性の魔法力を付与するアームズグリッターによって、アンデッドの弱点属性である光属性の魔法力でアンデッドを切り裂くことが出来る。
「うーむ……やっぱ、魔法使いと剣士の差なのかな……」
ブリーツが、自分の周りで倒れているリビングデッドと、サフィーの周りで倒れているリビングデッドを見比べる。
「倍くらい……いやぁ、それ以上差があるんだが……」
ブリーツがそう言っているうちに、サフィーは更に二人のリビングデッドを倒している。
「それだけじゃないんじゃないの? 相手の全体的な動きを見て、効率良く動けば、もっと早く処理できるわよ!」
「そうかぁ?」
サフィーが、更に、大柄なリビングデッド一体を地に伏させた。
「……やっぱり卑怯だろ! その二刀流!」
ブリーツがサフィーを指さした。
「別に卑怯じゃないでしょ! てか、そもそもそっちは剣自体使ってないじゃない! 魔法使いの方がよっぽど卑怯よ!」
サフィーが激しく捲くし立てる。
「ん……そう言われるとそうかもしれないが……」
ブリーツが納得しかけた時、サフィーの剣の光が薄れた。
「はぁぁぁ!」
サフィーがひらりと、前後で同時に攻撃してきたリビングデッドの斧を少しの動きでかわし、まず、前のリビングデッドを斬り伏せた。
「たらぁあっ!」
赤いツインテールをなびかせながら身を翻し、間髪入れずに後ろのリビングデッドも斬りつけた。
「……っ!」
サフィーはリビングデッドを深く切り裂いたが、リビングデッドは少し怯んだだけだ。サフィーは急いで後ろに飛び退いた。
「ブリーツ、魔法、切れた!
「えっ、マジでか! そりゃ大変だ!」
ブリーツは急いでサフィーの方へ手をかざした。
「
「え……」
ブリーツは、サフィーの後ろに、斧を持って、右肩の方に振りかぶっているリビングデッドの姿を見た。リビングデッドはサフィーを一回り大きくしたくらいの、屈強な体格をしている。
そんな屈強なリビングデッドがサフィーの背後から振り降ろした斧は、もうサフィーの首筋へと到達しようとしていた。
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