第1.1話しかし、シュークリームサンダーとは


俺は適当にコンビニ袋をガサると、シュークリームを口に頬張ろうとした。今日もよく働いた。頑張った。そのご褒美としちゃ軽いもんよ。

とか思っていた時だ。急に窓の外で雷鳴が聞こえ始めた。夕立っぽいやつだ。そして俺は思い出す。そうだ、ベランダに洗濯物を干して行ったんだっけか。

俺はため息をついてシュークリームを埃の積もったテーブルの上に置いた。


窓を開けると、予想以上に強い雨が目の前にあるコインランドリーの駐車場を濡らしていた。右手にある川も程よく氾濫し始めている。

そして雷が光った途端に耳を劈くような落雷が傍に落ちた。

俺は驚いて腰を抜かした。周りの家々から悲鳴があがり、人間たちが慌てて屋外に逃げようとしたり、止めたりする音が聞こえた。風も、吹いてきて部屋の中に大粒の雨が舞い込んできて本棚の漫画の背表紙に雨玉が、しみこんでいくシーンを見て俺は我に返り、急いで洗濯物を部屋の中にしまい、窓の鍵を下ろした。

俺はナチュラルに「クソが」と呟き、洗濯ハンガーに掛かった洗濯物を外していった。最近なんとなく荒れっぽくなった感じがする。

「何か不満なのか?」

「うっせーな、黙れよ」

俺は舌打ちをした。

「ほう、初対面の天使に向かって舌打ちとは、貴様、度胸だけはあるようだなぁ」

俺はガンを飛ばすべく作業をやめ、顔を前に向けた。

「ほぅ、この俺様とやるっていうのか? 宜しい。ならば、受けて立とうではないか‼︎」

俺は唖然とした。

何故唖然としたのか。一つは俺意外の声がする事のヤバさに気がついたから、もう一つはその人語を話してる奴が人間じゃなかったから。最後の一つは、その正体が、シュークリームでエノキみたいな手足を生やしてファイティングポーズを取っていたからだ。

奴の目と俺の目が合い、奴の目は闘志に燃えて、俺の目はきっと虚無の塊みたいな感じで、自分から戦うと言っておきながら、何も構えていなかった俺は、こいつが俺の顔面に飛びついてきた時に何もできないまま背後の窓ガラスに背中から倒れてバリンバリンにそいつを割りながら雨のベランダに転がった。


なんだこれ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る