素直な君に、素直じゃない僕は惹かれた。

てるてる522

第1話

「その前髪なんか変──」

僕の目線よりも下の方で声が聞こえた。

ただ僕の事を言って居るんだなと、気付くのには時間が掛かった。


斜め下を向くと、僕の切りたての前髪を見つめながら、彼女は立って居た。


「……え?」

「……ん? あ、あの──すいません、いきなり!」

彼女は僕が「いやいや気にしないで」と言って居る間にもロボットのように頭を繰り返し下げて、謝り続ける。


その姿が面白くて、何だか愛らしくて耐えきれずに僕は笑った。

「え? えぇ!?」と彼女も戸惑って居たが、僕の笑いをみてだろうか、自然と一緒に笑って居た。



少し時間が経って、彼女は

「いきなり失礼しました。今度お茶でも……」

と言って去って行った。



喋り方が結構しっかりして居た。

僕よりも凄く背が小さい(僕が高いというのも有るけれど)から、もしかしたら年下?

──年下に気を使わせて良いんだろうか……。


「やっぱり……」と言い掛けた時には、もうその彼女は見えない所まで走って消えてしまった。



*

春子へ


素直な君と、素直になれない僕。

君と過ごした時間全てが、今の僕にとっての最高の宝物です。

出会ってあっという間だったような気もするけれど、その中でも沢山の思い出を作ったね。

もっと大切にしたかった……。




**

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

素直な君に、素直じゃない僕は惹かれた。 てるてる522 @teruteru522

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ