第1章22 「帰還」

俺は強く言った。


「母さん、俺は駄目だと思っても行くよ」


母は当然、


「まだ言ってるの?本当に理解出来ないの?親の気持ちが」


俺は、静かに語り出す。


「俺はね母さん。母さん達の言っている言葉が1番正しいと思っている。でもね、あの世界は正しい言葉を並べても駄目なくらい普通の平穏が無い世界なんだよ。正しさだけでは、世界を変える事なんて出来ない。出来ないんだよ!!」


母は、俺の目を見つめてこう言った。


「侑が行って世界が変わるの?」


俺は一息置いて、


「変わるのじゃなくて、変えたい」


そんな話ばかりをするつもりじゃなかった。もう行かないとと、


「母さん、俺は止めても行くよ。行って帰って来てそれから母さんの言葉を受け止めるよ」

「侑…その気持ちは分かった。でも母さんは許していないからね」

「ああ、ありがとう。母さん」


俺がその場から立ち去る時、母は泣いていた。

ごめんね。


俺は、茜が居る病院へ向かう事にした。

学校には、また入院しないといけないと偽って、3ヶ月時間を取った。もちろん、留年する確率は大だった。

でも、自分の人生に後悔はしたくなかったから、こうして行動を取ったのだ。


「あれ?もう話は終わったの?」


玄関先まで迎えに来てくれた茜がそう言った。

正直迎えに来てくれるのは嬉しかったが、この身長で運転出来るのかと不安だった。


「まぁ、納得してくれたかは微妙ですけどね」

「そうなるよね…では、行こうか」

「はい」


茜の研究室に着いた瞬間少し緊張した。

やっと戻れるのかという気持ちと、本当に成功するのかという気持ち。

でも、自然と迷いが無かったのはおかしな話だと自分でも思った。


「青柳君」

「もうその呼び方止めません?茜さん」

「あーもうそれはそうだよね。侑君」

「侑君、君には1つ力をあげよう」

「力?」

「君には魔力が無かった。だから助けようにも助けれなかった。違う?」

「仰る通りです」

「だから、君に魔力を授けよう。それも膨大な」

「それ、チートじゃないですか…」

「ちーがーう!!チートじゃない!!」

「では、何と?」

「君にあげる魔力は大切な人を守る時のみ発動する魔力だ。しかも回復時間も掛かる」

「動けないとか?」

「それは、アニメの見過ぎだろ。それはない」

「だけど、1度使えば暫く使えなくなる。チートじゃないだろ?」

「まぁ、それなら良いんですけどね」

「だから、大事に使いたまえ。彼女の為に」


茜が放った言葉に強い想いを感じた。


「絶対に救ってみせますよ」

「それなら良いのだよ。行く前にコーヒー飲むかい?」

「折角なんで頂いておきます」


コーヒーを飲みながら他愛のない話をした。茜が異世界に居た頃の話とか、俺の事とか。

そんな時間程あっという間に過ぎる時間はないってくらい、あっという間だった。


「そろそろかな」

「ですね」

「侑君」

「はい」

「強くありたいと思え、さすれば君に強い力を与えてくれるだろう」

「ありがとうございます。茜さん」

「では、取り掛かろう。そこに横になって」

「お願いします」

「君が「戻れ」と念じれば戻れるようになっている。後、現実世界の時間も感じ取れるように術を掛けるから、好きな時に戻って来て」

「分かりました。無事に戻って来ます」


茜はその言葉を聞いて笑顔を頷いた。

そして、術を掛け始める。


「我が術式の魂よ。我に力を与えますわ彼を異世界との架け橋に」


その言葉を言い終えた後に俺の体の周りに術が開く。


「アース・クロリアル・アジェスト」


俺の意識が遠くなっていく。

意識が遠くなる最後に茜が、


「気を付けてね」


と耳元で言った様な気がした。


「ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」


その鳴き声を聞いて俺は目を開いた。


「ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」


目覚めたら、


「キャー」


そこは、


「全軍、続け!!」


異世界だった。


to be continued…

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