第1章20 「正体そして決意」
俺は茜が言った一言で、固まった。
「今、何って言いました?」
「だから銃の作り方だよ?」
「何で、それを知っているんですか?」
「私が、あの世界で魔女をしていたからね」
「!?」
俺の頭の中が一気に真っ白になった。
フィリアに呪いを掛けた犯人が今、目の前に居る事に、混乱してしまった。
同時にそれをさらっと言う茜の言葉の恐ろしさが伝わって来て、一気に茜を見る目も変わった。
「まぁ、そう警戒しないでくれよ。私が悲しくなってしまう」
「だって、貴女がフィリアに呪いを」
「ちょっと待て。私は確かに魔女とは言ったが、そのフィリアという者には呪いなど掛けていない」
「え?」
「多分、私の後を勝手に継いだ勘違い魔女がしたんだろう。私が居た頃にそんな子は王家に誕生していない」
俺は、その話を聞いて少し安心した様な感じがした。
「青柳君、私は魔女といっても悪い事をする為に魔女になったわけではない」
「では、何故に?」
「当時のバーンクロスには、治療薬があまりなかった。私も実は植物状態であの世界に行った。正直、最初は信じれることが出来なかったが、段々と馴染んでしまって、それで自分の知っている知識をフルに使ったが、それは皆が私を魔女と呼ぶきっかけになってしまったのだ」
「そうだったんですか…すみません」
「君が謝る事はないし、私がこの見た目だから悪いんだよ」
まぁ、明らかに幼女ですからね。
「今、何か心の中で思わなかったか?」
「いえ!!何も!!」
「怪しいな…」
「とにかく、私はそんな事はしない。分かった?」
「分かりました」
茜の説得もあって、何とか誤解は解けた。
しかし、真剣な顔に戻った茜がこう言った。
「まぁ、拳銃の外見を残したのは悪かったと思ってるがな。あれを魔力の道具として使う者が現れてしまったからな」
「俺も使ったので、何とも」
正直あの時は必死だったので、反省するのが今で初めてだった。
「まぁ、君は良かれと思ってやっているのだから、気にしなくて良いんじゃないか?」
「でも、何で現れたって分かったんですか?」
「私がもう一度あの世界に戻れたからだよ」
「え?」
「私は、君と同じく突然この世界に戻された。その原因は未だに分かっていないが、戻れる方法は私が見つけ出した」
「でも、また戻って来たんですよね?」
「ああ、これは私が自分の意志で戻れる様にしたからだよ」
「自分で戻れるんですか?」
「ああ、大分苦労したがな。失敗が50回でもう死ぬかと思ったよ(笑)」
「そんな簡単じゃないですよね…はは…」
「しかし、完成したといっても、これは非常に危険だ」
茜はさっきより真剣というより、暗い顔になった。
「はい。でも行きたいんです」
「そっか、その決意は本物みたいだな」
「よし、私は君に力を貸そう」
「有難う御座います」
「でも、すぐに準備は出来ない。だから短い間だが、今の生活も楽しんで」
「はい」
こうして話を終えた俺は、病院を出て家に帰った。
この事を家族にも言わなきゃならない。そう思った。
次、いつ戻れるか、いや戻れないかもしれない事を…
to be continued…
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