第1章16 「魔女を継承する者」

それは突然だった。

俺はいつもの様に、鍛冶の材料を調達し、いつも通り生活していた。

しかし、

「侑!!大変です!!」

いつも大人しいココアがこの日ばかりは声を荒げていた。

「ど、どうしたんだよ?」

「フィリアが…フィリアが…」

「フィリアがどうかしたのか!?」

「ええ…まさか同じ日になるなんて…」

「何だよ…同じ日って」

「今から5年前の今日…暴走したのです…」

「まさか!?」

「フィリアが…暴走しました…」

俺はもう声にならないくらい、唖然とした。

この日を恐れていた。でも5年も暴走していなかったので、何とか治す方法を見つける事までして、あと一歩だったのに…

「城はどうなっている?」

「今、魔法兵が待機しています。城は陛下含めて、皆さん無事です…」

「じゃ、暴走したのは、同じとこなんだな?」

「いえ、今回はフィリアの部屋で」

「部屋!?だったら外にも被害があるんじゃ!?」

「いえ、自室からは出ていませんので、外に被害はありません…」

「そうか…」

「ですが、国民には今回は知れ渡っています…」

「そんな…こっちには情報は来ていないぞ?」

「こちらは貧困地区なので、まだだと思います…」

「だったら…行くか…」

「危険です…」

「でも、このままじゃフィリアは殺されるんだろ?」

「ええ、そうなるでしょう…」

「だったら、アルファリベリオンを持っている俺達なら止める方法はあるだろう?」

「私には自信がありません…」

「あれだけ努力していじゃないか!!」

俺はつい怒鳴り声を上げてしまった。

八つ当たりをするつもりはなかった。でも落ち着いてはいられなかった。

ココアがここまで自信が無い以上、俺がしっかりするしかなかった。

でも、俺も結局動揺してしまっていたのである。

情けない。本当に。

「ごめん…つい」

「いいえ、私が情けないせいなので…」

「ココア」

「はい…」

「自信が無くても、不安でも、立ち向かわないといけない時がある」

「はい…」

「それが…今だ」

「でも…私…フィリアが…死ぬのを見るが嫌なの…」

ココアは泣きながら、そう答えた。

「分かった」

「え?」

「俺だけで行って来る」

「そんな…危険です」

「このまま何もしない方が俺にとっては危険だよ。心的に」

「侑…」

「ココアは、ここに居て」

「すみません…」

「心配するな!!必ず無事に戻るから」

「必ずですよ…」

「ああ、了解した」

こうして、俺は城に向うのであった。

何も作戦は無かったが、でもきっと何か策があるはずだ。

「俺は…」

「物作りの名人の息子だからな!!」


to be continued…

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