ハーレム・ランチ

 俺とワルディーは再度、注文カウンター前に向かった。もう相当な数の女子達で溢れかえっている。


「わあ~。りゅ、リューシロ、ワルディーと一緒にまんけんたいかい、うれしいスカ?」


 私と一緒に漫画研究会を退会できて嬉しいか? と彼女はおっしゃっています。何があったんだよ漫研で。


「うれしいうれしい。さっさと終わらせよう」

 俺の適当な返事にワルディーはむぅ~、とほっぺを膨らませ、ぺしぺしと俺の尻を叩いてくる。

 叩くな叩くな。俺のデリケートゾーンを大切に扱ってください。


 と、シズカのしょんぼりした顔が目に入ってきた。

 そういやアノ姫も一緒にメシ食いに来てたんだっけ。迎えに行こう。

「ほらワルディー。姫も一緒にジャンケンするんだろ?」

 ワルディーの頭にポンと手を置いてなだめる様に俺が言うと、彼女は機嫌を直して元気に答える。

「ん! シメもいっしょにまんけんラヨ!」


 最後はやっぱり漫研だよ! 的な事をおっしゃっています。退会からの出戻りです。



「はい。じゃあ姫。サリオにごめんなさいしなさい?」

 生徒会長が先輩らしく、シズカの頭を撫でながら優しく言っていた。あなた攻撃命令とか出してましたよね?

「沙理緒ちゃん、ごめんなさい」

 幼稚園児みたいなお詫びでペコリと頭を下げるシズカ。わぁ~、と周囲の女子一同が暖かい拍手でその美しい光景を称えた。


「はい。もうやっちゃだめよ? じゃあカタリンも謝っといて」

「マジか・・・・・・」

 生徒会長は眼鏡をキラーンと光らせ、俺に振る。

「ん、あまやっといて」

 隣のワルディーがどこかの上司みたいに偉そうな口ぶりだ。なんでドヤ顔なんだよ。


「サリオちゃん、ごめんなさい」

 とりあえずシズカみたいに謝ってみた。


「──チッ!」

「デカ盛ってんじゃねーぞ?!」

「カタリン風情が!」

「鬼ですか君たちは?!」暖かい拍手どころか冷たい罵声を浴びた俺は衝撃に声を上げた。


「はい。みんな遊んでないでジャンケン始めますよ。オバチャン、お願いします」

 サリオの大人な仕切りで遂に始まるクリームバースト争奪戦。シズカや生徒会長、親衛隊の乙女達もみんなヤル気満々だ。ワルディーに至っては興奮し過ぎて逆にピクリとも動かない。

 目を見開き猫グチのワルディー。獲物に飛び掛かる前の猫みたいだ。変な子。

「はいよ~。みんないくよ~。じゃ~ん、け~ん」

 ぽんっ、と声に合わせてグーやらチョキやらパーやらの手を上げた女子達と俺。オバチャンの上げた手はパーだった。

「ぎゃあー! 負けた~!」

「やったやった! いきなり勝てた!」

「あれ、あいこってダメ~?」

 勝ったの負けたのやいのやいのと、お祭り騒ぎが更にヒートアップだ。


「はい、じゃあ勝った人だけコロッケ配りますんでコチラに並んで下さい。ごはんセットはカウンターで受け取って下さい」

 広い学食が三百人近い希望者の喚き声で満たされる。

 他のメニューを選んで食事を始めている学徒達も、楽しげにその光景を眺めていた。

 

 しかしまあ、やかましい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る