スペース・ウィッチ
「ん、『ちょか』!」
(・・・・・・)
「ん、ん、『ちょかふく』!」
(・・・・・・かゆ)
「『ちょかふくニャン』!」
「かゆっ! 背中かゆっ!」
彼女の膝枕の上で俺は衝撃に目を覚ますと、まず背中をかきむしった。
「やった! 願いが届いた!」
「ナニ願ったんだよ! うっわ! かゆゆ!」
この魔女っ子はまたやらかしやがった。
「ナニって、元気になるようにだよ? アナタがこの辺でフワフワ浮いてて挨拶しても無反応で目を開けないから、これはマズイと思って私の超回復魔法で癒してみた次第です」
「何でかゆくなるの?! どんな魔法だよ!」
「で、でも目ぇ覚ましたよ?!」
「だが断言しておく! これは回復系魔法ではない! てか系統が分からないよ!」
なんて二人のやり取りが、どこかの宇宙空間でしばらく続いた。
「あのね、超回復魔法は『ちょか』、『ちょかふく』、『ちょかふくニャン』って、強くなっていくんだよ?」
「そうなのか。よし。二度と使わないで」
宇宙空間であぐらをかいてフワフワ漂う俺は、背後で正座してフワフワ漂いながら俺の背中をカリカリかいてくれている魔女っこに優しく言ってやった。
ふう。カリカリと気持ちいい。よい。癒される。
うーん、あながち癒し系魔法として間違ってはいない気もしてきた。
このカリカリとセットで初めて意味を成すという、ある意味次世代的な魔法かもしれない。
・・・・・・イヤめんどくせぇな次世代。まずかゆくする魔法ってなんだよ。しかも三段階なくてイイから。
「ごめんなさい・・・・・・」
しょんぼりカリカリ。
・・・・・・まあ、彼女なりに善意だったのは解ってる。
「バカ冗談だよ。心配してくれたのは──ありがとう」
俺が静かに言うと、カリカリが止まる。
「──う、うん」
彼女はつぶやくと、カリカリカリカリっと照れ隠しの様にせわしない。
「もうイイもうイイ。かゆいのなくなったよ。もう大丈夫」
「あ、あ、うん」
俺はフワフワしながら満足気にン~っと背伸びしつつ、後ろを振り返る。魔女っこはフワフワしながら、なんかモジモジしてる。
彼女の名はさたにゃん。スペース・ウィッチさたにゃん。略して変態だ。
「だ、誰が変態よ!」
なんて具合に彼女もある程度、人の心に融け込める様な存在だ。俺と似たような存在。
黒い大きなとんがり帽子、黒いボディコンスーツの上に折襟際立つ同色のロングコートを羽織っているその風貌。なぜかふさふさのシッポも生えてますが・・・・・・魔女だ! いいね?
ホウキにでもまたがってくれてりゃ説得力も増すが、さたにゃんは謎のブラックオーラに包まれた魔法戦艦『りばいあにゃん』や魔法戦闘機『ばはむにゃん』とかにまたがってやってきます。
そういえば初めて会ったときは魔法戦車『べひもにゃん』にまたがってたっけ。
俺はその時を懐かしげに思い出す。
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