俺、異世界で頑張ります! 〜運命を背負った転生物語〜

リュウ

第1話 プロローグ

「はぁ〜今日も疲れたな」


 俺はどこにでもいるような二十五歳サラリーマン。

 毎日7時に家を出て、電車に乗って職場に行き仕事をこなす。

 仕事もそれなりにこなし、それなりの給料はもらってるけど、それだけだ。


 同僚とは、特別仲の良い訳でもなく、仕事が終われば飲み会に行く事もなく帰路へつく。

 両親は高校生の時に亡くなって、俺は一人アパート暮らしだ。

 

 もちろん彼女はいない。

 今まで全くいなかった訳ではないけど、今はいない。これで彼女でもいれば少しは楽しいんだろうけど、今は作る気にもなれないし、こんな覇気のない男は女の子も嫌だろう。


 働いてからというもの、出世競争、営業とかで人の裏表を見ているうちに、冷めた人間になり、人と関わるのが嫌になってしまった。

 だから、職場ではどちらかと言うと地味で目立たない方だ。

 当然そんな男に寄ってくる女の子はいない。

 

 そんな俺の唯一の楽しみは、ネット小説を読むことだ。

 ネット小説に描かれる主人公は強くてモテるし、社会の人間関係に悩む事はない。

 いや、悩む事が必要ないくらい、自分に自信を持っているし、力もある。

 今の俺と全く正反対だ。


 「さて、更新チェックするか」


 俺は職場から出て、一人スマホを操作し、ネット小説をチェックする。


 俺はネット小説を読んで、その小説の中の主人公に自分を置き換えている。

 多少……いや、だいぶイタイ奴だとは自分でも分かっている。


 でも、現代の日本の生活に疲れて希望を見出せない俺は、そんな想像の世界に憧れ、もし生まれ変わるならそんな世界に生まれて、人生をやり直したいと思っている。

 そんな事できる訳ないけど……。


 俺はスマホを操作しながら家に帰る為、電車に乗ろうと駅のホームへ向かって歩く。


 「っ!?」


 俺は一瞬何が起きたか分からなかった。


 「痛っ……あれ? なんで?」


 なぜが俺の目の前は、スマホの画面ではなく地面がある。

 どうやら、考え事をしながらスマホを操作してて転けたらしい。


 「きゃあああああ!!!」


 悲鳴が聞こえる中、俺は顔を上げる。

 すると、顔を上げた瞬間、横断歩道の信号が赤になっていると、トラックが迫っているのが見えた。


 そして次の瞬間、俺の目の前は真っ白になった――。


――――――――――


 どれくらい寝ただろう。

 俺が目を開けると、目の前に写るは木の天井だった。


 木の天井? 

 あれ? 俺確か、トラックに轢かれたんじゃ……? 

 病院って白い天井じゃないっけ? 

 よく事故から目を覚ますと白い天井がって言うけど……?


 俺が意識を失う直前に見た光景は、横断歩道の赤信号と、トラックが迫っているところだった。


 たぶん、あのトラックのスピードから思うに俺は轢かれたと思う。

 生きているなら病院だと思うけど……。


 俺は周囲の状況を確認しようと体を動かそうとしたけど、身体が言う事を聞かない。


 マジか……。

 俺全身麻痺になったのか?

 くそ! まだ二十五歳だってのに!

 それにいざという時の為に貯金も貯めてたってのに!

 どうせなら楽しい事して使っておけば良かった!


 俺が声も出せずに悔やんでいると、目の前に顔が出てきた。

 一見して20代の女性。

 瞳は青で茶色の髪。


 なんだ? 看護師さんか?

 まさか、同じ歳くらいの女の子に俺は動かない身体を拭かれたりするか?


 と一瞬思ったけど、着ている服はナース服ではなく、なんというか少しぼろい。


 「×××××?」


 女性は何やら聞きとれない声を発している。

 

 くそ、俺は理解力までなくなったのか?

 ……ん? でも、今ちゃんと目で見て理解しているけど……。


 「××××××」


 目の前の女性は分からない言葉を発すると、俺を抱き上げた。


 えっ!? 俺を抱き上げる!?

 俺って結構身長あるけど!?


 その途端、俺は猛烈な睡魔に襲われ、また意識を失った。

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