5章 作品の山場を解決する

 前回までで、クライマックスの大きな問題を打ち立てられたと思います。

 あとはこれを解決すればいいのです。

 しかし、あなたは作品を面白くするために、敵を強くしすぎ、味方をボロボロにしすぎてしまいました。

 読者は「すげーピンチじゃん!どうなるんだろう!」とハラハラして期待していますが、どうすればその読者を満足させられる解決を導けるでしょう。


 というわけで、その解決方法は「物語の中から導き出せる範囲の、斬新で納得できる方法」です。漠然と言いますが、本当にこれしかないのです。



 その発想方法なのですが、やり方としては2つあります。

 

 1つはあらかじめ解決方法を考えてから書くことです。

 その解決方法を作品のどこかにさり気なく登場させておいて、最後に思い出させて、それを使って解決というやり方です。


 引き続き桃太郎を例にとれば、強大な鬼をどう倒すかの方法です。

 桃太郎はこれまでイヌ、サル、キジを仲間にしてきました。一見、彼らの力では鬼に歯が立ちません。しかし、キジの鳴き声はどうやら鬼の思考を乱す効果があると気づきました。

 これはチャンスです! 倒したー! というような感じです。

 

 思い出したり、気づくのではなく、条件を満たして覚醒というのもよく見られるパターンです。

 主人公が強い人物の子供だったりすると、最後に何らかの条件(強い感情に力が呼応など)を満たして才能が開花して、新しい力で敵を打ち倒すことがあります。


 そのほか既存の解決方法の組み合わせによる大きな効果もよく見られる手法です。合体技とか融合モンスターとかがその最たるものですね。


 つまり、物語の中にあらかじめ解決方法を出しておいて、それをとっさに生かして打ち倒すのです。これが正しい意味でのいわゆる伏線の仕込みというものです。



 2つ目は追い込むだけ追い込んで、その場で解決方法を一緒に考えるやり方です。

 ええーそこ予期しとかないと、破綻するんじゃね? と思いきや、そうでもないです。

 ジョジョの荒木先生も「やべっ! 敵強くしすぎた! どうしよww」と思ったことが何度もあるそうですが、毎回何とかしています。

 案外これって何とかなるというか、逆用できます。

 

 ヒントはここまでの物語にあるはずです。

 自分の作品をクライマックスになって見返してください。その作品の中で、クライマックスの打破に生かせる何かを自分で探してください。それは物語の根幹に関っていると、なおさら良いです。


 引き続き桃太郎を例にとれば、強大な鬼をどう倒すかの方法です。

 桃太郎を読み返すと、イヌ、サル、キジをきび団子で仲間にしてきたくだりがあります。これにはどうやら動物の鎮静効果やらがありそうです。これを鬼に与えつければ、相手を何とかできそうだ! というような感じです。


 また、ここを一般的な合理的発想で解決に導くのも一つの手法です。

 よく料理などの職人系の漫画でこの手法が使われるのですが、主人公の得てきた知識を応用して、解決する形です。

 このサイトのファンタジー人気作「異世界ですが魔物栽培しています。」著:雪月花さん はその好例だと思います。


 後から考えたほうがかえって、作品を生かした解決になって盛り上がることも多いです。あらかじめ考えておいた解決方法があっても、最後に見返してより面白い、または盛り上がる解決方法がないかは確実に吟味したほうがいいです。



 さて、この解決方法についてはタブー(やってはいけないこと)がたくさんあります。代表的なものを列挙してみます。

 とはいえ、プロ作家、特に納期の厳しい連載漫画だと、プロでも結構失敗していますよねぇ……。


 まず、脈絡がなかったり世界観に反していてはダメです。

 桃太郎が口笛を吹いたら、急に金太郎と浦島太郎が加勢して倒してくれたーとか、そもそもお前ら誰だよという話で、興ざめしてしまいます。

 あとちゃんと主人公らの力で倒しましょう。

 世界観の話なら、桃太郎が急に機関銃を持ち出したりするのは言語道断です。

 

 続いて、キャラに合わない解決もいけません。

 急に桃太郎が柔術の極意を解き始めて、鬼相手に奥義で圧倒する、なんてのは一般論的に有効であっても、そのキャラがその極意を閃くことにうなずける部分がありませんので良くないです。


 また、解決が相手の不調または運による偶発的なものでもいけません。

 主人公の策によって相手が状態異常を負うとかならいいのですが、急な腹痛とかで相手が実力を出し切れないとかじゃあ、オマケしてもらったようで煮え切らないじゃありませんか。


 さらに最後に、解決策がバレバレでも盛り上がりません。一見して真っ当な作戦は対策済みで無効にされて、さらに絶体絶命!?くらいの難易度が盛り上がります。読者の誰もが思いつきそうな方法では面白みがないのです。 

 

 終わりがきちんと締まってないと、そこまでが良くても最後の印象がぶち壊れになりかねません。詰めの部分もきちんと検討したいものですね。


 具体的な解決策について、様々な発想方法をまとめたサイトがありましたので、参考にしてみてください(このサイトはその他の記事も、とても参考になります。)


「問題解決は、解決方法の「意外性」がポイント!」より抜粋

(ttp://anatanomonogatari.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/vol1222-d9f0.html

 無料ストーリー創作講座「物語を書きたいッ!ブログ」より)


 ここまでで山場は整えられたかと思います。

 次章はキャラクターについて、考察を深めます。 

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