第101話 静殿1
退席して信義に静殿のうわさを聞こうとしたら、「ご自分の目で確かめられるのが、一番でございます。」と言われる。
何を言っているのかわからなかったので、「見合いは二日後だが、その前にどうやって相手(うら若き女性)を見ることができるのか?」と聞く。
すると、「普段なら手下を連れて街を歩いている。」という。
俺はそれを聞いて又しても、「はー?」という訳のわからない声を出してしまった。
自分が想定できないことを経験できるということは良いことなのだろうが、最近俺の周りで、俺の常識が通用しないことが多すぎる。
詳しく話を聞くと、静殿はやはり信義と同じで、小さい頃から英才教育を受けてきたらしい。
結果かなりの腕前となったが、戦に参加する訳にもいかないし、やはり女に負けたとなるとかなり外聞が悪いので、道場の師範になることも出来ない。
そこで、勝手に始めたのが、街の風紀取り締まりで、女性だけの自警団を作って、巡回等を行っているという。
当然佐々木教官は止めさせようとしたが、「だったら師範代にして下さい!」と言われ、悪いことをしているわけではないからと引き下がるしかなかったそうだ。
俺はまったくの初耳だった。
そう言われれば、三川滞在時に、そうした集団を目にしたことがあった様な気がするが、殆ど印象に残っていない。
信義に聞くと、学校では皆、佐々木教官に遠慮してこの話題にはなるたけ触れないようにしていたそうだ。
ならば、俺が知らないのも仕方がないと思った。
しかし、それほどの有名人なら、三川内では、嫁の貰い手がいなかったのではないかという発想か頭をよぎる。
俺との関係強化、嫁の貰い手のない有名人の厄介払いと克二もいろいろ考えた様だ。
なんにしろ、見合いの日を待たずに相手を見れるのならこれにこしたことはない。
信義の案内で、彼女が普段いそうなところに行く。
すると独特の白い着物を着た女性の一団がいた。
確かにあれは目立つ。「もしかしてその先頭にいる女性が静殿か?」と考える間もなく、信義が「あの先頭にいる女性が静殿です。」と言ってくる。
思い出してみると、確かにあの集団を見た記憶はある。しかし、関わり合いになると面倒そうだからと見なかったことにした記憶もある。
「それが俺の見合いの相手かー」というのがまず最初に浮かんだことだった。
どう考えても厄介場合にしか見えない。しかし、強い女性を希望したのは俺自身だ、そうすると自業自得でしかない。
本来は自分自身でいろいろ彼女に接触してみるべきなのだろうが、かなりの衝撃を受けて、完全に気がそがれてしまっている。
信義は顔が割れているし、女性の集団ということで、小夜に接触を頼む。
「どのような女性かひそかに探ってきてくれ。」と命令すると、小夜は正面から歩いて行って静殿と何か話始めた。
「何を馬鹿なことをしているのだ。」と思っていたら、話が盛り上がったようで、話しながら笑い始めてさえいる。
どうなるのかと見ていると、そのまま連れだって歩き始めた。
後をつけていくと、食事処に入って一緒に飯を楽しそうに食っている。
それを見ていたらいろいろ小細工をろうしようとしていた自分が馬鹿馬鹿しくなってしまった。
多分静殿は見た通りの姉御肌の気の良い女性なのだろう。
小夜とは見たところ性格があうようなので、多分似たようなところが多いのだろう。
確かにあの見た目というか行動では誤解されやすいが、悪い人ではないと思う。
しかし、自分の嫁となると、どうしても少しというかかなり思うところはある。
とりあえず、大体どんな人かわかったので、帰ることとした。
小夜も後から帰ってくるだろう。
彼女がその時、どんな話をしてくるかは大体想像に難くない。
俺の頭にあったのは、さて二日後にどうするかということだけだった。
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