Q 勇者とりゅう王神どっちがつよいのかな?

第11話 みせてもらおうか、神と勇者の力とやらを

「あの……ハクト。あたしもちょっと聞いてもいい?」


「なにをだよ……」


「《異世界最強の力をもつ者》って、貴方なのハクト? こういってはなんだけど……とてもそうは見えないから」


「そうは見えない……か。そりゃ、そうだろう。オレというよりもハクのことだろうな、当然」


「さっき、神がどうこう言っていたけど……あれって、本当?」


「本当のことだ。おまえもさっき見ただろう? オレの中から出てきたハクを」


 オレとグリーンの視線がハクに注がれる。


「クルピスがもう、なくなってしもうた……」


 そんな彼女はオレの傍らで、空になったクルピス瓶をながめている。傍目にみていても、痛々しいぐらい落ち込んでいた。

「いっぺんに、飲むなよ……」

 こぼしてしまったとはいえ、残り少なくなってしまったクルピスを、いっぺんに飲んでしまうあたり、お子様そのもの――


「うああ! 目が、目があぁあ!」

 

 おもいっきり瓶を覗いていたハクの目に、クルピス原液がはいったらしい……。訂正。お子様以下。

 目を押さえ、部屋の床をゴロゴロとのたうつハク。

 これは……痛そうだ。


 ……こんなハクが神というのは、言っているオレが恥ずかしくなってきた……。

 残念そうな表情をうかべる、グリーンと目が合った。

 ……うん、おまえが言いたいことは、よーく解る。


「……ハクちゃんって、ほんとに強いの? かな?」独り言のように、グリーンがつぶやいた。


「誰にものいってんのじゃ、ミドリムシ風情があ! 野原で雑草でもくってろうイモ虫勇者!! そんで外敵に襲われて臭いツノでもだして防衛していろ! そんで鳥にさわられて木の枝に刺されて忘れ去られてカラッカラに干からび死んでまたイモ虫に転生して延々とループしていろ!」


 片眼を押さえながら、グリーンにまくし立てるハク。お目にかかれないレベルの典型的な八つ当たりだ。なんか痛さのせいか、妙なテンションになっているし。……こういうときのハクは、あいかわらず口がわるい。


「そんでループ九九九九回目でダンゴムシ転生スタートだからな! 覚えておけ!」


「ハクちゃん……ひどい」ショックを受けた様子のグリーン。声をかけたタイミングが悪かったな。


「おちつけ。ほらハク。目薬」


「回復などいらんわ!」


「りゅうおうらしさに溢れる台詞だけど、とりあえず視界は回復したほうがいいんじゃないか?」


「ん。やっぱり回復する。ありがと……シロ」


 オレから渡された目薬をさして、すぐに眼帯を装着するハク。

 ……いや、なんで眼帯をポッケに常備しているんだよ。妙にうれしそうだし。



「ちょっといい?」


「どうしたグリーン?」 


「あたし……ハクちゃんを、試したいんだけど」不敵な笑顔をうかべるグリーン。

 その瞳は挑戦的だ。そしてオレは、グリーンのこめかみに💢マークが浮いているのをみのがさない。……あ、怒ってるんだな、やっぱり。


「はあ? なんでわしがそんなことをしなきゃいけないのじゃ、いやじゃ、面倒くさい!」


「これあげるよ」


 ――カラン。と涼しげな音がした。

 そこにはコップにつがれ、氷の浮かんだクルピスがあった。

 オレが注いでいたグリーンの分だ。


「!? 全身全霊! 虚心坦懐! 最期の一兵までやらせていただきます! やらせていただきますとも! 捧げます!」


 心臓部分に右拳を重ねる敬礼ポーズをとるハク。

 前のめりがちに、すごい勢いで捧げていた。


 ……ハクの操縦法を短時間で理解するとは、やるなグリーン。

 ハクが単純すぎるという話もあるが……。


「よかった。それじゃあさっそく」その場でたちあがり、腰の剣に手をかけるグリーン。――って、おい!


「っうか、まてまて二人とも! オレの部屋で試すなよ。外いこう外」部屋で剣なんぞを振り回されたら、たまったもんじゃない。


「たしかにそうね」「そうじゃな」


「近くの河原なら広いから、そこへ行こう」オレはそういって、二人についてくるように促した。


――それにしても、少しおもしろいことになってきた。

 よくよく考えてみたら、オレはハクの力を直接見たことはない。普通に暮らしていたら、そんな状況が起きるものではないし、そのような状況に身を置く気もなかったからだ。

 とはいえ、しょうじきなところ、機会があればハクの力を見てみたかったし、グリーンの勇者の力とやらも見てみたい。


「みせてもらおうか、神と勇者の力とやらを」


 オレはイケメンボイスでそんな台詞を吐いて、歩をすすめた。

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