焦ったシンデレラ(ついに王子が……?)

Tは王子でもなんでもなかった。

顔は確かにかっこよかったけれど、服装には無頓着だし、田舎出身で寡黙な性格で、面白いことは全然言わないばかりかほとんどしゃべらなかった。

それでもわたしは男友達ってものができたようでとにかく浮かれていた。

Kと二人、年上のお姉さんたちでTをからかうようなことを言っていました。

「もう~T君は顔だけなんだから」とか「T君、顔『は』かっこいいのに~」って感じで。

Tは怒りもせず、笑いもせず、「ん?」って感じでとぼけてたけど後になって聞いたらけっこう頭に来てたらしい。すみません。


そして、夏。

わたしの誕生日が過ぎて24歳になったばかりのころ、家でぼけーっとしてたらTからメールが来た。

「今から遊びに行かない?」って。

わたしは驚いてほんとうに2~3cm飛び上がった。

なぜなら、今までは連絡先は交換していたものの、実際に連絡をとりあっているのはKとTで、わたしはKから「3人でどこどこ行きましょう」って連絡がきているだけだったから。

わたしはすぐに「いいよ! どこに何時?」って返信を打ってから慌てて服を選んだ。なにしろ、二人だ。

男女二人だからデートだ!

Kがいなくて、二人だけで……デートだ!!


しかし、わたしは数分後へたりこむはめになる。


「すみません! メール送る相手間違えました!」

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