星は瞳に堕ちて
わたしは20代前半のころ、宅配便の営業所で内勤事務をしていました。
受付に直接荷物を発送に来る方や荷物を受け取りに来る方の対応をしたり、伝票の整理をしたり、当時は集荷や再配達の電話を受けて、ドライバーさんに連絡する業務も行っていました。
とにかくそこは男所帯で、男性社員30名ほどに対して女性は4名で、独身女性はわたしと一つ年下の後輩、Kだけでした。
わたしは中学生の時、太っていることが原因でいじめられたこともあるので若い男性が苦手で、仕事のために話さなくてならない時も目が合わせられずにいつもおどおどしていたと思います。
たいしてKは美人ではなかったけれどスタイルがよく、人懐っこい子だったのでよく男性社員と談笑していました。
ドライバーさんたちはお店や市場などで果物や野菜など商品をもらってくることがあるのですが、それを気前よくKにあげることがありました。
Kはけして性格の悪い子ではなかったので「銀河さん、もらいましたよ~」って必ずわたしにも分けてくれました。
Kが全部もらって帰ったら、それはそれでむかついたのでしょうが、おこぼれをもらうのはそれはそれでなんだかみじめでした。
ドライバーさんも「Kちゃんにあげたのに、なんで銀河にまで?」って思ったかもしれないし……。
実際にドライバーさんたちはそこまで深くは考えていなかったと思いますけど。
Kは独身ドライバーさんと携帯番号を交換するのも早かったです。
わたしは男性と世間話すらできなかったので、「いつの間に!?」って感じでした。
出勤から退勤までずっと同じ空間にいたのにどうやってわたしやほかの女子社員に知られずに番号を交換していたのか今でもまったくわかりませんね。
さて、わたしのこれからの話の中心になる彼はその宅配便営業所の仕分けのアルバイトに来た大学生でした。
わたしは彼がアルバイトを2つ掛け持ちしている大学生だということも雪国出身だということも3つ年下だということもすべてKに聞きました。
本当、いつの間に聞いたの?っていう速さです。
確かにKが興味を持つのも無理はないくらい、彼はイケメンでした。
背が高くて髪はちょっと直毛な真っ黒で、きりっとした顔だちにまつ毛がバサバサいうくらい長い。
真っ黒な瞳はなんだか星が落ちたようにいつも輝いている……というのはもっと間近で彼の瞳をのぞき込めるようになってから知りましたが。
とにかくわたしの中で彼の顔は芸能人なんかも含めても好きな顔ナンバーワンで、それはこれからも永遠に変わらないと思います。
だけど、だからこそ、彼はわたしとは別の世界の住人でした。
その頃わたしは23歳でしたがまったく男性に免疫がなかった。まして年下のイケメンなんかとわたしの人生が少しでも重なり合うことなんてないと思い込んでいた。
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