第7話
――効いたのか?
よろめく女を見て考える。
自分が何をしたのかよく分からない。ただ、攻撃が通ったりそれだけは事実。
――体術だったら俺の方が上。あの女は動きが雑だ。スピードを読み切って一撃をもらわないようにすれば勝機はある!
満身創痍な体だが突破口を見つけ出したことで理はまだ闘える。
辺りはすっかり暗くなっている。道場の中から射し込む光だけが理と女を照らしている。
「いくぜ」
理は重心を低くしたまま女の腰骨に向かって突進する。その姿は低空飛行する戦闘機のようだ。
女は理の突撃に対応すべく腰を落として彼の動きをしっかりと見る。
理は射程距離まで残り二歩のところで左足で地面を踏んで飛び上がった。低所から高所へ。しかも接近しながらこの運動が行われた。
女は理が一瞬視界から消えたように錯覚する。
隙だらけの女の肩に向かって理は右の踵を大きく振り上げ、そのまま落とそうとした。
しかし、突然理は右の方向へ吹き飛んでいた。右半身に衝撃が走っている。空中で何かに邪魔をされた。
それは茶髪の女の仕業ではない。第三者。
「うちの妹、いじめてんじゃねーよ」
理は先ほど右手を押さえながら言葉を発した主を見る。
背中にいくつもの武器を携え、胴体、腕、足そして顔面に包帯を巻いているミイラのような人間がいた。
ミイラは包帯の上にカンフー服を羽織っている。
「誰だ? テメー」
「『テメーら』だっての。ダルいなマジ」
金髪で長い髪の毛をカールしている女が言う。彼女はカンフー服ではなく、チャイナドレスを着ている。黒地に銀の刺繍がされているドレスはモデル体型の彼女にとてもにあっている。
――囲まれた?
「ハハハハハハ!
大騒ぎしているのは黒髪でツインテールの少女。周りの女より明らかに年齢が下だ。中学生の風貌の彼女はピンク色のカンフー服を着て、大きなリボンを背中につけている。
「
ぐつぐつと煮えたぎる様な語気で語り出したのは黒髪で肩までの長さの女。セミロングというやつか。ふわふわしたヘアスタイルだ。
年齢は二十歳は超えている。老けているというわけではなく、大人の色気が少しある感じだ。
「
茶髪の女は白い
「もう大丈夫だよ。後は私達がやる」
「そんな事しなくていいよ!ちょっと油断しただけだから!」
「ほら、楚歌もああ言ってることだし、ウチらは帰ろーよ、姉ちゃん。ダルいしさ」
金髪カールが言う。
「駄目。姉妹を傷付けるのは私が許さない。それだけは絶対に。だから皆にも協力してもらう、これは私の我が儘」
「我が儘じゃなくて命令だろ。断ったら機嫌悪くなる癖に、ダル過ぎだって」
金髪が誰にも聞こえないようにぼやく。
理はようやく理解する。五人組の『道場破り』。彼女らも『道場破り』なのだ。
「マジ、かよ.....」
「ここの看板は戴く。アナタもタダじゃ済まさない」
白い
絶対絶命。父親の言ったように逃げ出すべきである。恐らく、他の四人も
一人でも手に負えないのにそれが五人。勝ち目はない。何とか見えた突破口が閉じてしまう。
――でも、ここで逃げさすなんて出来ねえよ!
「上等だ、かかってきやがれ!」
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