寵愛のカルマロンドール
夢宮ワンド
序幕 「歯車」
かつて栄華を極めた王国があった。その名はロンドール王国。
比肩する者のいない武の才覚と、誰もが王たることを認めるその高潔な精神。終生全てを守るための力を追い求めた始まりの王、ロランド・ネル・ロンドール。
彼の威光もさることながら、その妻であるレイアも負けず劣らずの人物であった。ロンドール王国が建国してから200と余年、彼女の名を知らぬ国民はいない。彼女は世界を愛した。それは全てを守ろうとした夫、ロランドや小さくとも懸命に輝く自分の娘たちに留まらず、すべての人間を生かすこの世界への愛だった。その愛は理をも変質させ、この世界に一つの奇跡を起こした。今も世界で語られる『寵愛の加護』という奇跡。レイアは世界に寵愛を示し、世界はそれに答えた。
この世界では愛は形を成す。焦がれる愛、優しい愛、無償の愛、憎しみを内包する愛、そして壮絶なまでの愛。これは愛する者と愛される者がいて初めて成り立つ奇跡だ。形は違えど確かに存在するその愛は、人智を超えた『加護』をもたらす。そうして寵愛を受けた者は『加護』を手に入れ、寵愛を授けた者は本懐を遂げる。
それが世界の理として、あるべき姿として存在する世界。
200年。人の身には長すぎて、世界からは刹那的に過ぎる。そんな時の中、自明な動作を取っていた歯車は、じわりじわりと人間を、そして表裏的に世界を締め上げ、嘲笑うかのように人も、世界をも狂わせていた。
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