ファイターとライオンと、ねこ。
@motocurum
第1話ファイター
聞いたこと、あるかな。
どこかの村に伝わる、昔話みたいなものさ。
この村の子供たちは、夜寝付けないと、母親の膝の上でこのお話を聞かされる。
そしたら、どんなにぐずる子も不思議と、すとんと眠りに落ちるんだ。
気になるかい?
どうやら不眠症のようじゃないか。どうしてわかるって?
だってほら、鏡をごらんよ。
目の下のクマ、ひどいぞ。まるでパンダじゃないか。
「さぁクマパンダ、特別に俺が教えてあげる。ありがたく聞きなよ。普段じゃ高いんだ。」
突然、ぼくの狭くて暗い一人の部屋に上がり込んできた風変わりでどこまでも失礼な少年は、鼻をすすりながら語りだした。
小さな子供が聞かされるという、知らない田舎の昔話を――
僕は、鏡を見てぞっとする。確かに僕の目のクマはまるでパンダの黒い目そのものだったから。
僕は仕方なく、2人分の珈琲を用意した。薬缶を火にかけるのも久しぶりだったので手間取っていたら少年が笑った。
「おいおい、ここは君の城なんだろう。何してるの。しょうがない王様だな。」
「・・・ぼくは王様なんかじゃ」
言いきらないうちに、彼は少し早口で語りだしてしまう。どこまでも失礼な奴だ。
ぼくだって、こんなつもりじゃなかったさ。
小さな子供じゃないんだ。バカみたいだと思うよ。
でも、僕は気が付くと夢中だった。
少年の口から出る単語は、確かにただのフィクションであるはずなのに、どこかレアリティで
なによりとっても暖かった。
それが僕には、とても、とても文字通りにありがたかったんだよ・・。
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