あの信号機はいつも赤信号

雪音

第1話 いつも通りじゃない

いつも通りの通学路。いつも通りの時間。いつも通りの赤信号。そんな至って普通な日常が壊れてしまう出来事なんてそうそうないと思ってた。だが、現実はそんなに甘くはなかった。確かに、好きな奴なら興奮するような展開だろう。だがな!俺はそんなこと望んでなんかいないんだ!何処にでもいるただの学生で良かったのだ!「何でこんな事になってしまったんだよ…」そんな言葉も空を駆ける竜の羽の音でかき消されてしまう。 そう、ここはいつもとは違う世界なのだ。


異変に気がついたのは朝の事だった。俺の行く学校の途中には信号機があるのだが、その信号機は決まっていつも赤なのだ。家を出る時間を変えても、歩く速度を変えても。遅かれ早かれいつも赤なのだ。不思議な事もあるものだと度々思っていた。が、しかし今日の信号機は何かがおかしかった。いつもなら10秒程度で青に変わる信号機が30秒、いや1分以上待っても変わらなかったのだ。「おいおい、勘弁してくれよ。」いくら待っても変わりそうにない信号機を俺は赤信号のまま渡ってしまおうと考えた。幸いこの道はいつの時間帯も車の通りが少ないから事故になる事はまずないだろう。俺は一応周りを見て小走りで信号を渡った。問題はその後だった。気が付けば、俺は見たことのない場所に立っていた。「…は?」思わず口に出してしまった。「おい、ちょっと待て。いくら何でもたかが4,5m進んだだけで、異世界に来ちゃいました♪ってなるか⁉︎そもそも何で俺なんだ⁉︎ドッキリなのか⁉︎どこかでカメラでも回ってるのか⁉︎」慌てふためく俺は取敢えず何かの間違いではないかと必死に辺りを見回した。しかし、カメラなんて1つも見つけられない。それどころか、異世界に来てしまったと思い知らさせるようなものが沢山見つかった…無限に広がる空には翼を大きく広げて飛ぶ竜がいて、目の前の草原では人の3倍はありそうな大きなひよこ?みたいな黄色い鳥が草を食べている。確実にここは俺の知っている世界じゃない。今、分かってることを頭の中でまとめる。1、ここは異世界である。2、この世界についての知識が全くない。3、元のせいに戻る方法は不明。4、これからどうすれば良いの…(泣)こんなの誰がどうやっても死んじゃうじゃん。サバイバルして下さいって言われても生き残れる可能性0%じゃん。てか、普通こう言う状況の時って美少女ヒロインとか女神様とかが助けてくれるやつだよね?誰も来る気配ないんだけど⁉︎「最悪、汗臭いおっさんでも良いから俺のことを助けてくれよ…」

そんな願いも空しく、誰も来ない事を薄々察した俺は取敢えず歩き出す事にした。「まず最初の目的は人に会うこと。少なからず会話が出来る奴と会う事だな」先程までと違って妙に落ち着いていた。恐らく、諦めているのだろう。自分でも分からないが絶望的すぎる展開に死をまじかにしているせいかもしれない。それよりもまずは人に会わなくては話にならない。こんな理不尽な死に方があってたまるか。「魔王でも何でも倒して元の世界に戻るんだ。」俺はどこに向かっているのかもわからないまま歩きながら決心した。今回の最終目標…生きて元の世界に帰る‼︎

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あの信号機はいつも赤信号 雪音 @yukinekureha

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