第1345話 地下で研がれる牙

転移通路に飛び込み、その先へと足早に駆け抜けていく岬と空狐。

その途中に兵器は存在していないのか迎撃は無いがそれが逆に二人の内心に不安と焦燥感を抱かせる。

それを表しているかのように二人は言葉を発する事も無く只中が青く光るだけの通路を駆け抜けていく。

その青色は皮肉なのか二人に対し冷静に成る様に呼びかけている様にも映る。


「見えた、あそこが通路の出口よ!!」


空狐がそう叫ぶと二人の目の前には通路の出口とされる光が表れ、そこに飛び込んでいく。

その光の先には機械的な意向を放つ闘技場の様な広い空間が広がっていた。


「此処は……まるで闘技場の様ね、此処で兵器の試験をやっていたとでも言うの?」

「その可能性も考えられなくはないわね、最も、試験相手が何なのかは分からないけど、同じ兵器同士でってだけじゃないかもしれないわよ」


岬がこの空間についての疑問を口にすると空狐は周囲を見渡し、岬に対しとある一点を指差す。

するとそこには昇降機らしき機器が備え付けられており、そこから上の階に兵器を運んでいたのは明白であった。

だが空狐が言いたいのはそれだけではない、兵器ではない何かがそこから行き来しているのでは無いかという事も合わせて言いたいのである。


「そうね、だけどそれ以上に此処は一体何処なの?」

「端末に星峰が入れてくれた地表データスキャンで調べてみるわ」


岬が更に疑問を口にすると空狐はその返答として端末を取り出し、星峰が入れてくれたという機能を使い始める。

そして一分程時間が経過すると


「此処はどうやら南大陸の地下の様ね、只、地形が複雑に入り組んでいて何処なのかまでは正確には特定出来ない」


と空狐が口にする。


「此処が南大陸って事は、以前コンスタリオ小隊が調査したとされる大型遺跡のさらに地下部分に存在しているのかもしれないわね」

「その可能性も考えられなくはないわ、だけど今私達が此処を詳細に調べている余裕は無い、何しろ時間が無さ過ぎるのだから」


岬と空狐はこう言葉を交わし、この場所の事を気にしつつも調査は断念する事を告げる。

だが通路に引き返す前に空狐は手にした端末から通信を何処かへと送る。


「何処に通信を送るの?」

「南大陸の拠点、キャベルの司令官、つまりコンスタリオ小隊の上司によ。

此処が南大陸である以上、地上に兵器が溢れ返った場合最も被害を受ける可能性が高いのはキャベルだからね。

逆にキャベル以外に兵器が向かっていったら……」


空狐の対応は地上の自警を要請するものだが、それ以外にも何かがある様に思える。

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