第1337話 走る霊諍

防衛部隊を率いて転移妖術の通路を走り抜けていく霊諍、そんな霊諍に対し防衛部隊の兵士が


「宜しいのですか?殿下の命令とは言え我々は引き返して……」

「ええ、私にも殿下は明らかに私達を逃している様に見えました」


と疑問を投げかける。

自分達に通路の閉鎖任務を任せた事に対し、少々ではあるものの不満を感じている様だ。

そんな兵士達に対し霊諍は


「確かに僕達が頼りないと思われている可能性は完全には否定出来ない、だけどそれは殿下がそれだけあの施設を、そして施設内に居るであろう存在を驚異に感じていると言う事なんだ。

それを無視して無理矢理同行して足を引っ張りでもしたら本末転倒だろう」


と返答する。

それを聞いた兵士達は返す言葉に困るのか黙り込んでしまう。


「それに遺跡の敵だって完全に排除出来た訳じゃない、残ってくれている防衛部隊の兵士や兵器も永遠に戦える訳じゃないんだ。

何時までも任せっきりにしておく訳には行かない」


霊諍は更にこう言葉を続け、防衛部隊の面々も放ったらかしにしておく訳には行かないという事を改めて告げる。

一同がそう話した直後、目の前に小型兵器が出現する。


「小型兵器!?通路内にも隠されていたというのか!!」

「だとしたら我々が通り過ぎた後にもこの通路から遺跡に向かったのでは!?」

「防衛部隊からの通信が無いって事はまだ接触していないか、或いは迎撃に成功してくれたって事なんだろうけど、そうだとしても余計な増援が出てきてしまったのは確実だね……幸い目の前の数は多くは無い、早々に仕留めるよ」


霊諍はそう叫ぶと


「雄豹の舞!!」


と言い、両手の爪を鋭く立てて兵器に接近し、その周囲を回りながら正に舞の如く優雅な動きで兵器を両断する。

それを見ていた兵士も周囲から霊諍に襲いかかろうとする兵器に対し手にした武器を連射し破壊する事に成功する。


「兵器の破壊に成功か、どうやらこの兵器は赤制御の兵器では無いみたいだね」

「ええ、隊長の攻撃が通用した事からも伺えますし、何より件の発行体が見つかりませんから」


周辺に散らばった残骸からその事を確認した霊諍達はその足の勢いを早め、更に急いで遺跡の方へと戻っていく。


「見えてきました、遺跡の入り口です!!」


兵士の一人がそう叫ぶと確かに霊諍達の目の前に遺跡内の光景が広がる空間があり、そこから外に飛び出していく。

そして周囲を見渡した後霊諍は


「つっ、さっき僕達が突入した際には無かった傷があるね」


と周囲に見慣れない傷がある事を確認する。

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