第1224話 赤色の波動

「此処でも時間はかけてられねえ、一気に行くぜ、黒羽の五月雨!!」


八咫はそう言って黒い羽を矢のように鋭くして兵器へと降り注がせる。

しかしその羽根が兵器に当たった瞬間に誰も想像していない事態が生じた、羽根が当たった所にダメージが入らず、それどころか兵器の中へと取り込まれてしまったのだ。


「何だ!?羽根が兵器に触れた瞬間……消えた!?」

「消えたというよりも取り込まれたと言った印象だけど……一体何が起こったの!?」


何が起こったのか分からず、八咫と岬は困惑した声を上げる。


「くっ、分析を……」


星峰はそう言うと分析妖術を使おうとするがそれを察したのか兵器は星峰に対して集中攻撃を仕掛けてくる。


「つっ、攻撃を集中されては分析妖術を使う時間が……」


兵器からの攻撃は回避するものの、其の攻撃が分析の妨害の為に行われているのは明らかであった。

それが分かる為、星峰の言葉も若干焦燥感を含んだ物になる、それほど分析されたくない技術が使われているのだろうか?


「星峰!!くっ……魔王妖術、赤色の波動」


天之御はそう叫ぶと目の前から其の名の通り赤い波動を放ち、星峰を攻撃している前方の兵器集団目掛けて放つ。

すると其の兵器は吹き飛ばされ、其の衝撃と壁に叩きつけられた反動で大破する。


「星峰、大丈夫!?」


攻撃が終了した事、否兵器が破壊された事を確認した星峰は床に足をつけるが、其の表情から焦燥感が消えていない事を悟らせる。


「つっ、こいつらの攻撃、明らかに分析妖術に反応していた…分析をそれほどまでに恐れているというの?」

「確かに……今の天之御殿下の攻撃も回避行動を取る意味は無かったとはいえ、全く動かなかったのは妙だったわね……あの動き方は明らかにどうなっても構わないという様な印象だった」

「其の考えで正しいのかもしれない、それだけじゃないかもしれないけど」


空狐と星峰が述べた一連の動きの感想に対し、天之御はそれに続ける形で更なる仮説を口にする。


「それだけじゃないって、どういう事なんです?」

「回避する必要がなかったのかもしれないって事さ」


岬が天之御に仮説への疑問を呈すると天之御はこう返答し、更に


「今の兵器に赤色の波動が当たった時、一瞬兵器の動きが其の場に留まっていたんだ、そして暫くしてから吹き飛んだ、妙だとは思わない?」


と逆に周囲の面々に対して問いかける。


「妙って……ああ、そういう事ですか、それは確かに妙ですね」


其の問いかけに対して其の場にいる全員が何処か納得した表情を浮かべる。

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