第1225話 妖術を吸う物

「あの兵器は殿下の放った波動に対し僅かながらでも踏ん張った……いえ、妖術を中和或いは吸収した可能性がある、そういう事ですね」

「ああ、そう考えれば最初に八咫が放ったあの黒羽が平気に吸収された様に見えた現象も説明が付く」


空狐が天之御に対し問いかけの答えを返すと天之御は其の答えが自身の中の疑問に対して正解の回答である事及び最初の八咫との現象の整合性について述べる。

その仮説に無理はなく一同はすんなりと受け入れる、否、何時もの事ながら他に妥当な考えが浮かんでいないという部分もあるのだが」


「それは分かりましたが、もしそうだとするとここの兵器は相当重要な存在、或いはそれを守護する存在なのではないでしょうか?

もしそんな技術を持つ兵器がこれだけの数量産されているのであればブントの性格から考えて間違いなくこれまでの戦場に投入してきた筈です」

「全くもって其の通りね、だけどもしそれが出来ない理由があるとしたらそれはここでしか量産出来ない、少なくとも現時点では。

そう考える事も出来るわ」


岬が更なる疑問を口にするとそれに対し星峰が言葉を続け、その仮説、疑問を肯定すると共に一つの答えを用意する。

其の用意された答えに対し岬が


「ここでしか量産出来ない?」


と更に疑問で返すと星峰も


「ええ、それだけの技術を用いて作られた兵器なのであればそう簡単にその技術を持ち出す事が出来ないのかも知れないわ。

そして仮にそうだとするとこの施設はブントの施設なのではなく、ブントが見つけて利用しているだけであり本来は別の勢力が作り出した施設である可能性もある」


と更なる回答を用意する。

それを聴いた岬は納得した表情を浮かべるものの、星峰の告げた別の勢力という言葉が耳に入った途端口にした本人も含め、其の場に居る全員の顔が険しい物になる。


「この施設を調べる事で愈この戦乱の……いや、太古から続く戦乱の真実に、終わらせる方法に辿り着けるかも知れないね」


天之御がそう告げると其の場に居た全員の険しい顔は変わらないが、そのまま頷く様子に何処か希望の様な物が感じられる。


「それを確かめるためにも僕たちがここで立ち止まる訳には行かない、先に進もう!!」


涙名がそう声高く宣言すると天之御含め全員が首を縦に振り、足を前に進めて行く。

そして先に進んでいくとそこで地下に進む階段、そして前に進む通路という分岐地点が目に入ってくる。


「通路と階段、何方を先に調べるべきだと思う?」


天之御がそう問いかけるが、其の問いの印象は何処か回答が分かりきっていると言いたいようにも思える。

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