第1199話 故郷への疑念

「それってつまり……調べてくれるって事ですか?」

「うん、これが作戦を阻止出来なかった罪滅ぼしになるとは思わないけどね……それにブントの手掛かりが掴めるのであれば其の可能性にも掛けてみたい」


シレットが天之御に問いかけると天之御はこう返答するものの、後に続いている文と云々の部分は明らかに付け足した様な印象があり、先に出した罪滅ぼしの部分こそが本心であろう事は其の場に居た全員が感じていた。

だがそれを口に出しはしない、否出来ないと言うべきだろうか。


「其のタウンが今も現存しているという保証すらもありませんよ。

襲撃から逃れた時、私は只そこから逃げるのに精一杯でタウンがどうなったのかは全く分からなかったのです。

それにタウンの名前も分かりませんし」


シレットは更にこう告げるが、それを聞いたコンスタリオが


「タウンの名前も分からない?それは少し可笑しく無い?」


と口にするとシレットは


「隊長?一体何が可笑しいんですか?私は……」


と反論しようとするがコンスタリオは


「幾らシレットが幼少期であったとしても其処に住んでいたのであればタウンの名前位は周囲の大人から教えられる筈でしょう?

例えタウンから一歩も外に出なかったとしても其の位の情報は伝えておかないと外からの来訪者に対する説明等の機会もある筈、それすらもないという事は……」


と言い、自身が今の話の何処に不可解な印象を抱いたのかを説明する。

するとシレットも納得したと同時に表情に若干の歪みが現れ


「そう言われると……確かにそうですね……」


とコンスタリオの意見に納得する。


「確かにそうだけどよ、もしそうだとしたらシレットの居たタウンってのは一体どうなるんだ?」

「恐らくは元から名前が存在していないタウンか、或いはそもそも地図上に存在すらしていないタウン……いえ、そもそもタウンと呼ぶのかどうかすら疑わしい場所なのかも知れない」


モイスがコンスタリオに対して質問するとコンスタリオはこう返答する。

一見すると突拍子もない回答に思えるがその表情には明らかに何かしらの根拠が映し出されていた。


「一体其の根拠は何なんですか?只の推測という訳ではなさそうですが」


岬がコンスタリオに問いかけるとコンスタリオは


「シレット、、モイス、西大陸で名前の無いタウンを調べた事を覚えてる?」

「ええ、確かにそんなタウンが、正確に言えばタウンA等という……まさか!?」


ここまで来てシレットとモイスはコンスタリオの言いたい事に気付いたのか表情が明らかに変化する。

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