第1143話 兵器と兵士の思惑
「確かに……あの見た目はこれまで見てきたどの兵器とも異なっているわね……」
兵器の方へと目をやった空狐はそう呟いて交戦体制を取る。
そして果敢に兵器へと向かっていき、その手に構えた剣を振り下ろして切断する。
兵器の接合部分自体はそれほど耐久性がないのかその一撃であっさりと切断できるものの、兵器は怯む事なく空狐に反撃を加えようとする。
「つっ、この兵器もかなりの反応速度ね……見た目だけでなく思考パターンもこれまでに無い兵器だというの……」
空狐の脳裏に少し悪い予感が過る。
それが的中したのかどうかは不明だが兵器は的確に空狐に対し連携して攻撃を加え、反撃の鋤を与えようとしない。
「連携も以前交戦した兵器より明らかに優れている……これまでとは違う場所で生産された兵器だとでもいうの……」
連携に劣勢に陥りつつも空狐は冷静に兵器の動きを分析する。
一方、兵士達がそんな空狐を援護する気配は見られない。
ブントとしての本性を見せているのか、それとも兵器に劣勢になっているのか、何方かは不明であるが、とにかく援護は期待出来ないというのはその場の状況からみて明らかであった。
「つっ、部隊の状態はどうなっているの?戦えないのであれば早く離脱して!!
でないと全滅しかねないわ」
空狐がこう大声で話すと兵士は
「それが……移動車両が原因不明の故障で立ち往生している間に攻撃を受け、負傷した兵士も含めるととてもここから離脱するには……」
と明らかにしどろもどろになりながら話す。
どうやら車両が故障した事がその場からの離脱にも支障をきたすと言いたいようだ。
「なら私が兵器を引き受けるからその間に可能な限りの兵士を連れて離脱しなさい!!負傷した兵士は後で私が救援を呼ぶわ!!」
空狐はそう叫ぶと兵士に離脱するように促すが兵士は
「いえ、それでは……」
とどこか歯切れの悪い回答でその場に残ろうとする。
恐らくはブントの兵士としてこれ以上情報が流出するという自体を避けたいのだろう。
読唇術を使わずともそのくらいは読める、それ程に兵士の動揺と行動は見て取れた。
「わ、分かりました……それでは……」
空狐の気迫に圧倒されたのか、兵士も後退りしながら動けるものは動く、そんな状況ではあるものの、少しずつ兵士がその場から離れていく。
「確かに負傷している兵士も多い……それ以上にあの兵器はどれだけの数が存在しているの……地下から出ているとしてもこれだけの数がどこから……」
兵器と兵士を睨みながら、空狐は状況を冷静に分析する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます