第1116話 信頼故の爆走
それを見届けた豊雲は
「それは私達も同様ですよ……次は、何れは貴方達と世界の将来を語り合いたいものです」
と含みを見せつつも穏やかさを感じさせる笑みを浮かべた後、転移妖術でブエルスへと帰還する。
そして例によって謁見の間に向かうとそこには他の面々が既に集まっていた。
「豊雲、事情は兵達から聞いたけど、此方が応援を送る前に事が片付いた様だね」
「いえ……完全には片付いていないと言えるかもしれません、もしかすると今後の流れに大きな影響が出る可能性もあります」
天之御は嬉しげな声を掛けるが、それに対する豊雲の返答を聞いてその表情に険しさが見える。
そして豊雲が事の一部始終を話すと星峰が
「コンスタリオ小隊も向かっていたのね……確かに情報は提供したけど、一番最初に彼処に向かうなんて、少し予想外だったわ」
とコンスタリオ小隊の行動が星峰にとっても予想外であった事を告げる。
「予想外?彼等の事は君が一番良く知って……」
「ええ、だからこそ予想外なのよ、コンスタリオ隊長の考え方からすればもう少し情報を収集してから向かうと思っていたから。
いきなり大物を狙って飛び込むような行動を取るタイプじゃないという事をよく承知しているが故にね」
天之御が星峰の発言に対し問いかけると星峰はその真意を説明する。
「成程ね……これまでの隊長さんらしくない行動だから困惑してるって訳か」
「ですが、隊長さんは何か焦燥感に駆られて行動したという訳ではなさそうです、寧ろこの場合、星峰に対する信頼からそうした行動をとったとも考えられませんか?」
納得した表情を浮かべる天之御と見たままの状況を伝える豊雲、だが二人の表情と声は確実に星峰に安心感を齎し、その顔に穏やかな笑みを浮かばせる。
「それはそうとしてだ……豊雲の伝えてくれた情報をベースにすると今回の一件で判明した問題は二つある。
一つは生命制御の空中型兵器、そしてもう一つはあのアンナースという少女についてだ」
「あの少女についてはブントの構成員であるという事は既に調べがついていました。
ですがブントの構成員とはいえ、いきなり銃を持ち出して理性を失い発砲するというのはあまりにも不可解すぎます。
コンスタリオ小隊を始末したいのであればもう少し策略を練って行うでしょう」
天之御と空狐の指摘は最もであり、その点に関する異論は出ない。
「ああ、だとすると考えられるのは元々あのアンナースという少女に何かが仕掛けられていた……これが一番可能性が高いな」
続く八咫の発言にも異論が出る事は無かった。
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