第1114話 イェニーの悪意

「その少年をどうするつもりなのです?」

「無論、連れ帰って調べてみます。

もしこの生命がこの世界に生きている生命と何処か異なっているのであればそこからブントを攻める事が出来るかもしれませんからね」


シレットの質問に対し豊雲は淡々とこう答える、だがコンスタリオ小隊の耳には豊雲の声は単にぶんとの情報を得るためだけに行動しているとは思えなかった。

可能であればその少年を、生命を助けたい、そう言っているように聞こえたのだ。


「分かりました、その少年についてはそちらにおまかせします、但し……」

「分かっています、この少年の情報については貴方達にも余す所無く提供いたします、貴方達の信頼に答える為にも」


コンスタリオの質問に対する豊雲の返答は先程のデータの返礼の様な意味合いにも感じられたが、一方で豊雲の偽らざる本心である様にも聞こえた。


「では、今日は此処までと致しましょう、ですが最後に一つだけお教え頂けますか?無論、返答に困られるのであれば構いませんが……」


別れ際にコンスタリオが豊雲に対してこう問いかける、だがその問いかけの内容はシレットとモイスにはその意図が直ぐには掴めなかった。

コレ以上問いかける事があるのかが不明だったからだ。


「はい、何でしょうか?」


豊雲が問いかけるとコンスタリオは


「この大陸は何処の大陸なのです?南大陸から此処に来たと入っても此処が南大陸とは限らないでしょう。

そもそもそうであるならば貴方が一人で此処に居るとは思えません、いえ、正確に言えば魔王が一人だけ此処に送るとは思えないのです」


と豊雲に問いかける。

すると豊雲は少し間を開けてから


「その通りです、此処は南大陸ではなく東大陸です、貴方達がイェニーから例の飛空艇を受け取った地下倉庫から繋がっている通路から繋がっている場所です」


と返答する。

その返答を受けたコンスタリオは


「やはり、南大陸の地下通路にはワープ通路が使用されているのね、だとすると先日アンナースが使用した通路もワープ通路なのでしょう」

「つまり、南大陸の地下通路には……いえ、ブントの地下通路はワープを使う事で移動していたという事ね、そうすれば痕跡を残さずに移動出来る」


と納得した表情を浮かべ、シレットもそれに言葉を続ける。


「此処が東大陸って事は、イェニーもこの施設のデータを得ていたのか、或いは元々開発していた兵器を此処で得たデータで強化したのか……」


モイスもその言葉を聞き、ふと疑問を口にする。

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