第1107話 一時の微笑み

そしてここで作り出された生命の一覧と思わしきデータを確認する。


「データが確認出来る生命は……当初は膨大な人数が記載されていましたが次第に減少し、最終的に数パターンまで絞り込まれていますね……

コレは一体どういう……」

「余り考える必要はないわ、単に兵器制御用、肉弾戦用、魔術・妖術戦用、それぞれに最適化した兵士を作り出しているというだけの話に過ぎない。

顔や肉体にそれぞれ多少の個体差はあるものの、能力にばらつきはそこまで見られないのがその証拠よ」


一覧に記載されているデータをみたシレットがふと疑問を抱くとコンスタリオはそれに返答する、それを聞いたシレットは納得した表情と頷きを見せるものの、その表情は険しい。


「となると、この生命達は見た目は違えど中身は殆ど同じって事か……しかもそれは能力に限らねえ……

恐らくは内面もそうなんだろうな……」

「ええ……兵士として生み出すのであれば思考はともかく、感情は存在しない方が都合が良いに決まっています。

恐らくはここで生み出された生命は個体として生きる事は許されず、只ブントにとって都合がいい兵士としてのみ生を許されているのでしょう」


シレットと同じく、モイスも険しい顔でデータを閲覧しながら告げる。

そしてそれに続けて豊雲が告げた言葉も又、真実ではあるのだろうが残酷な物であった。


「そしてここでは兵器と兵士の両方が作り出されていた……恐らくは一挙両得を狙った施設なんでしょうけど、どうしてこの施設が今まで活用されてこなかったのか……その点は疑問として残るわね」

「ええ、私もその点を当初より疑問として抱いております」

「私も?という事は魔王はこの施設の事はまだ知らないの?」

「ええ、殿下はこの施設についてはまだ存じ上げておりません、この施設は本日私共の調査隊が見つけ、そのまま調査を行っているのです。

一応殿下への報告に一部の兵が向かいましたが、具体的に殿下に、そして星峰達にどの程度まで情報が伝わっているのかという点につきましては不明なのです」


コンスタリオと豊雲の会話はこの施設への新たな疑念を生じさせる。

そして豊雲が最後に星峰の名を出した事はコンスタリオ小隊に対する配慮なのだが、それを察してかそうでないかは不明だがコンスタリオ小隊の顔に微かに微笑みが浮かぶ。

だがその微笑みも長くは続かない、次のデータを確認した時、一同の顔は揃ってコレまでにない程の驚嘆を見せたからだ。

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