第1087話 アンナースの新手

いきなりの攻撃ではあるものの、コンスタリオ小隊は事前にその異様な空気を感じ取っていた為、大した焦りもなく十分に対応可能な範疇であった。

一同は早々に攻撃を回避し、そのまま分散して反撃に移る。

それはアンナースも同様であり、生命の攻撃が止んだほんの一瞬の鋤を突いて構えた狙撃銃で生命の心臓部分を的確に狙い撃つ。

その狙い撃ちはアンナースの十八番であり、前回の様に内面に問題を抱えたまま攻撃しているとは思えない。


「アンナース……どうやら少なくとも今は調子を戻しているようね」


その様子を見たコンスタリオは内心で少し安心する。

しかしそれが鋤を生んでしまったのかその一瞬を突いて生命が魔術、妖術の詠唱を始める。


「術の宣言をしないで詠唱体勢に!?此奴等、そんな能力まで持っているっていうの……」


その様子を見たコンスタリオは慌てて攻撃態勢を取り、生命へと接近していくがその前に詠唱が完了してしまい、魔術と妖術が今正に放たれようとしたその瞬間、アンナースが放った狙撃銃の弾丸が術を放とうとした生命に悉く直撃し、その急所を貫いていく。


「アンナース!?今のは……」

「術式貫通弾です、術式詠唱時の魔法陣は弾丸を弾く物もありますが、此方はそれを無効化し貫いて攻撃する事が出来る、つまりは対術式用弾丸と言える代物です」


困惑するシレットに対し、アンナースはこう淡々と続ける。


「術式貫通って……そんな弾丸があるなんて今まで聞いてなかったぞ……」

「私もですよ、私がこれを渡されたのはついこの間ですから、それに前々回や前回の任務では使う機会がありませんでしたからね」


同じく銃撃を得意とするモイスも知らなかったその弾丸についてアンナースはこう答える。

いや、問題なのはモイスが、コンスタリオ小隊がその弾丸について知らなかったという事ではない、それを今編んナースがここで使ったという事の方である。


「それを今ここで使っていいの?」

「ええ、こんな得体の知れない連中を野放しには出来ませんからね」


シレットの問いかけに対し、アンナースは明確にこう答える。

既に自分がブント側の構成員であることは悟られていても可笑しくは無いアンナースだが、それでも敢えてここでそれを使ったという事は一体何を意味するのだろうか。


「そんな事より今は目の前の敵の迎撃が先では?このままだと更に奥から何かがデてきそうな雰囲気ですよ」


アンナースの言う通り、一行が交戦している生命の軍勢の奥から更に何かが出てきそうな雰囲気が漂い始めていた。

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