第1081話 伝えない真意

「ええ、少なくとも今この段階で司令に魔神族との共闘を伝えるのは得策ではないわ。

キャベル内の混乱を寧ろ助長しかねないもの」


コンスタリオはこう返答するものの、その顔は司令に伝えていないというより伝える必要がないと言っている様にも見える。


「そうではなく、伝える必要がないんじゃねえか?って感じの顔をしてるけど、それは一体どういう事なんだ?」


モイスがその顔を見て更に踏み込んでいくとコンスタリオは


「……気付かれたわね……そうよ、私は司令に伝えていないのではなく、伝える必要がないと思っているの。

何故なら司令も魔王陣営の協力者である可能性があるからよ」


と理由までを添えてモイスとシレットに説明する。

その説明を聞き、モイスとシレットは一瞬動揺した表情を浮かべるものの、直ぐに何時も通りの表情へと戻る。

どうやらこの回答は彼等二人にとってもそこまで想定外の内容でもなかったようだ。


「あら……そこまで動揺した様子でもないのね……」


その反応を意外に思ったのか、コンスタリオがこう口にするとモイスとシレットは


「まあ、この状況であれば特別不可思議な現象じゃねえからな」

「ええ、隊長が司令に詳細を伝えていないのは司令が既にこの事実を承知しているからではないか、そう思っていましたよ。

それに魔王陣営の協力者が人族部隊にもいる可能性は既に十分考えられますから。

それが司令官である可能性も十二分に考えられます、ただ、実際にそうだとしたら司令が今どの辺りまで、問題点を把握しているのかという点については知りたいところですが……」


と返答する。


「ええ、司令が魔王陣営の協力者である可能性は十分考えられるわ、そしてそうであるならブエルスの陥落時にも魔王陣営に協力し、ブント側であった法皇の身柄拘束に協力した可能性が高い。

魔王陣営が敢えて法皇を処刑すると言う形でその死を知らしめたのはそうする事によってブントを牽制する意味もあったのかも知れないわね」


コンスタリオの仮説を聞き、シレットとモイスは只黙り込む、

それは無知な自分達への苛立ちか、それともブントに都合よく利用されていたが故の怒りか、それは本人達にすら分からない程に強く渦巻いていた。


「ブント……そう言えばアンナースは大丈夫なんでしょうか?この状況からしてアンナースがブントと少なくとも何らかの接点があるのは略確実でしょうし……」

「確かにね……だけどコレは彼女自身の問題、彼女自身がどう決断するのかを見守る事しか私達には出来ないわ……」


少しの沈黙の後、シレットが口にしたアンナースへの心配に対し、コンスタリオは一見すると冷淡だが的を得た発言をする。

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