第1080話 もう一つの道は

「来歴が存在しない少女……少なくともデータの上では存在していないと言うだけでもその可能性は十分に考えられる、そして今回の交戦で彼女は取り込まれていた生命を友人だと述べていた。

もしこの友人というのが本当にそうなのだとしたら、彼女自身も……この件についても可能な限り迅速に調べる必要がありますね」

「ああ、アンナースという少女……彼女がブントにどの様な経緯で関わっているのか、その点を調べれば一気にブントを突き崩す事が出来るかもしれない」


星峰の発言に続く天之御の発言により、この戦いが新たな局面を迎えつつある事が暗に示された。

一方その頃、キャベルへと帰還したコンスタリオ小隊も又、今回の一件について司令官に報告していた。


「そうか……アンナースが……」

「ええ、生命を制御装置とする兵器、そしてその制御装置として利用されていたアンナースの友人、これらの事でかなりショックを受けている様です」

「で、当の本人はどうしている?」

「今は自室に籠もっています……誰にも見られたくないからと……ショックも無理のない話なので私達も同行はしませんでしたが……」

「妥当な判断ではあるな、だがこれで今後の魔神族との……いや、その兵器を送り込んできた連中との戦いは厳しくなる事は避けられない。

何しろ此方は戦力が圧倒的に不足しているのだから」


コンスタリオの報告に対し司令官は険しい顔を浮かべる。

その顔と話の内容からコンスタリオはどうやら兵器の送り込み先は伝えたが、魔神族と共闘した事は伏せている様だ。


「アンナースについては君達に任せる、只、最悪は彼女を戦力から外すかもしれないということについてだけは君達も承知しておいてくれ。

この状況で迷いは命取りになるからな」

「了承していますよ、その位は」


司令官の一言に対し、シレットがこう返答する。

だが司令官の発言は、いや、正確に言えば発言している際の司令官の顔はアンナースに対してだけでなくコンスタリオ小隊についても向けられている、そんな印象を受ける険しさと厳しさを感じさせる顔であった。


「では、私達も自室に戻ります、今回の一件はあまりに不可解な点が多すぎるので一度整理をしたいのです」

「分かった、君達への独自行動の許可は引き続き出しておく。

その整理時間もその一環という事にしておこう」


こう告げるとコンスタリオ小隊は司令室を後にし、その足でコンスタリオの自室に向かう。

そして自室に着くと早々にシレットが


「良いんですか?魔神族と共闘した事を伝えなくて」


とコンスタリオに問いかける。

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