第1027話 起こり出す海練

「それで、解析の結果はどうなっているの?何か新しい事は分かった?」

「今の所判明しているのはあの兵器が連携戦闘を前提として製造されていたという仮説は正解であるという事、そして現在その技術はどの先史遺産からも発見されていないという事の二点です。

それ以外の技術面では特に現在まで発見されている先史遺産の技術と相違点は見られませんでした」


天之御が今回の主訴である兵器の製造技術に話を戻すと霊諍はこう返答し、現時点では仮説が当たっていたという事しか言えないという事を暗に告げる。


「仮説が当たっていた……か……しかし、それだけでは説明がつかない部分がある、何しろあの兵器の動きは明らかにこれまでの兵器を上回っていたのだから」

「回収した残骸以外の部分にそれを解く手掛かりがあるのか、それとも何らかの方法でその証拠を抹消したのか……何れにしても現状ではそこまで断定する事は出来ません。

なのでその残骸を更に回収する為に出向いたのですが……」

「そこで彼等に遭遇し、彼等にも残骸を提供したと言う訳だね」

「ええ、殿下や空狐殿のお話を伺う限り、あの場で下手に残骸を独占しようとして交戦するより、兵器の情報を共有してもらって兵器に対する脅威を認識していただいた方がより問題への対処がしやすくなると思いましたので」


天之御が霊諍にした問いかけはまだ兵器の全容が解析出来ていない事を示していた。

それが事実であれば大変な脅威になる事は明白であるが、同時にこの残骸が部分的とはいえブントに渡ってしまったという事実もあり、その脅威は予断を許さない状況に来ているのではないか、二人はそう思わずには居られなかった。


「分かった、兎に角君達は引き続き兵器の解析を再優先事項と考えて。

もし何か分かったら直ぐに此方に連絡を、無いとは思うけど、くれぐれも自分たちだけで対処しようとかそんな事は考えないでね」


天之御がそう告げると霊諍は


「分かっています。そもそもこの兵器が本当にこの戦乱を大きく動かすような存在であるのならば僕達だけで対処出来るような問題ではありません。

その奥に潜む暗部……それを炙り出す為にも対処を誤らないようにしなければ」


と返答し通信を切る。

それを確認すると天之御は


「コンスタリオ小隊に兵器の情報が渡ったか……これがどう動くか……いや、どういう風に動かしていくかを考える事が重要だね……」


と呟き、少し状況に流されそうになった自分を恥じる。

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