第1007話 続く歪み

「これで大体の報告は終わった訳か……あとは僕と豊雲だね」


天之御がそう告げた直後、豊雲から通信が入りそれに気付いた八咫が


「おっ、噂をすればって奴かも知れねえぜ」


と告げる。

其の口調は軽口の様に聞こえるが、明らかに声には重みが込もっていた。


「天之御殿下、聞こえますか?此方にも兵器が侵攻してきましたが、迎撃に成功いたしました。

ですがこれまでの兵器とは明らかに違う箇所があります」


通信が繋がると豊雲はそう告げ、それを聞いた天之御は


「豊雲の方の兵器も何か引っかかりがあったんだね」


と告げ、其の言葉に表情を変えた豊雲に対しこれまでの報告の概要を纏める。

それを聞いた豊雲は


「そちらで交戦された兵器も様々な点で明らかに異なっている点があったのですね……ですが此方で交戦した兵器の違いはそれらとは又異なっています」


と告げる。


「また異なっている……?一体どういう事なの?」


豊雲の言葉に天之御が反応すると


「ええ、今回私達が交戦した兵器は其の一部に生命らしき細胞が使用されていたんです」


と告げる。

其の言葉を聞いた一同は顔色が変わり


「生命の細胞が使われている!?」


と声を揃えて驚嘆する。

それを聞いた豊雲は


「ええ、私も実際、見た時には信じられませんでした。

ですが、調査班に調べてもらった結果、間違い無く生命の細胞が組み込まれているという事が伝えられました」

「生命の細胞って……一体どういう目的で……」

「細胞の詳細を調べてみた所、神経伝達物質を通す細胞であるという事が判明しています。

恐らくは兵器の制御システムに生命の神経伝達物質を組み合わせる事で柔軟性を組み込んでいるものと思われます。

まだ調査が終わっていない関係上、はっきりと断言する事は出来ませんが……」


と言葉を続け、涙名との会話も含めて現状で考えられる仮説を伝える。


「生命の細胞を組み込む事で柔軟性をもたせる……ブントであれば如何にも持ち込みそうな技術だけど、今まで調査してきた施設にそんなデータは無かった。

となるとブントも其の技術は入手していない可能性が高いわね」

「ええ、私の血族のデータにも其の様な物は記録されていなかったわ、そうだとすると先史遺産の遺跡にもそうしたデータは記録されておらず、特定の場所でしか発見出来ないデータなのかも知れない」

「もしそうだとしたら、ブントにそれを入手されたら大変な脅威になるね……」


豊雲の報告に対し、他の一同は顔を揃えてそれが脅威である事を感じる。

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