第987話 異質なる地下

「論より証拠、見てもらったほうが早いと思う、だから来て」


涙名がそう言うと天之御達は黙って立ち上がり、涙名の先導の元で何処かへと移動していく。

その行き先は地下へと降りる階段を通り、薄暗く不気味な雰囲気を漂わせる通路へと続いていく。


「ブエルスの城の地下にこんな通路があったなんて……何だか不気味ですね……」

「不気味なのも無理はないね、何しろここは……」


空狐がふとこう呟くと涙名はその感情を肯定した上でこう言葉を続け、更に


「ここを見ればその不気味さも納得してくれると思う」


といって通路の先にある扉を指差す、だがその扉も又、普段開け閉めしている扉とは雰囲気が全く違っており、何処か異質な雰囲気を漂わせている。

涙名が扉を開けるとその奥には先程の司令官と指揮官が身柄を拘束され、壁に貼り付けられていた。

その光景を見た空狐は思わず


「!?こ、これは……!?」


と動揺した声を上げてしまう。


「彼等が入ってくると自動的にこうなる様に仕掛けられているんだよ、この部屋はね」


涙名が淡々と説明する、だがその説明は先程の天之御の自嘲と同様、何処か自虐と嫌悪感が入り混じっているようにも聞こえる。


「つまり、ここは尋問室という訳ですか……」


空狐が動揺しながらそう告げると星峰は


「オブラートに包んだ言い方をすればそうなるわね……でも空狐自身も気付いているんでしょう?

ここは尋問なんて生易しい場所じゃないって事に」


と告げる。

そう聞かされた空狐は


「……ええ、ここは尋問なんて生易しい物じゃない、ここは……拷問部屋」


空狐がそう発言すると天之御、星峰、涙名は揃って首を縦に振り、その答えが正しいという事を結論付ける。


「私達をどうするつもりなんですか、魔王様……」


司令官が口を開くが、その言葉は何処か白々しさを感じさせる。

先程のモニター越しではそこまで感じなかったが、こうして直接言葉を聞くとそう感じずにはいられない。

天之御と星峰は内心でそう思っていた。


「別に何もしないよ、君達が知っている事を全て話してくれればね」


天之御はそう言うと司令官と指揮官の顔を見る、その顔は涼しいものであるが、それが逆に司令官と指揮官にしてみると恐怖、畏怖の対象であった。


「も、もし話さなかったら……」

「その時どうなるかはあなた達の方が分かっているでしょう?」


司令官と指揮官の発言に対し、今度は涙名が返答する。

天之御と同様、或いはそれ以上にその言葉には冷たさが感じられた。

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