第970話 突きつけられる銃口

兵器の照準はそのまま人族部隊に向けられ続け、其の狙いは全く人族指揮官には読めない、だがこれが心穏やかでいられる状況ではないという事だけは確実であった。


「あの兵器は一体何を狙って銃口をこちらに向けている……魔神族部隊は既に後退を開始しているというのに……」


指揮官は兵器の、更にはそれを操作している存在の狙いを必死になって思考していた、そして其の結果導き出された結論は


「客員、後退しつつある魔神族を追撃する、そのまま追撃体制に入れ!!」


と部隊に命じる。

唐突に出された追撃命令に人族部隊全体が明らかに困惑した表情を浮かべる。


「!?指揮官、一体何を……」


副官がそう困惑した声を上げると指揮官は


「移動しながら説明する!!今は兎に角魔神族部隊を追撃しろ!!」


と発破をかける。

其の勢いに気圧されたのか副官は


「りょ、了解……」


と言い、全軍に追撃命令を出して魔神族を追撃させる。

そして指揮官が搭乗している前線移動車も動き出した後、副官は


「指揮官、追撃命令を出すとは一体どういうつもり……」


と先ほどの命令に対する当然とも言える疑問を呈する。

魔神族側も人族側もブント側である以上、追撃等すれば自分達が後々不利になるのは明白であった、にも関わらず指揮官が追撃命令を出したことに対し疑問や違和感を感じるのは当然と言える、それに対し指揮官は


「あの兵器達がどうして我々に銃口を向けているのか……それは我々と魔神族部隊が実は裏側では密かに繋がっているのではないかという疑いを抱いた者があの兵器を操作しているからだ」


と返答し、其の言葉を聞いた副官が


「兵器を操作している者がそうした疑問を抱いている……つまりは其の者は我らの同士ではないと?」


と問いかけると指揮官は


「当然だ、何故その者があの兵器を操る事が出来たのか、其の点の疑問も当然としてあるが、今はそれどころではない、追撃を怠ればその銃口は此方側に、つまり我等に向けられることになるのだ」


と返答する。


「我等にという事は……つまり、あの兵器が此方に銃口を向けたまま撃って来なかったのは……」

「そういう事だ、もしこの状況で我々が魔神族部隊を迎撃しなかったとしたら間違いなくあの兵器は両方の部隊が裏でつながっていると考えた者の操作によって我々を攻撃してきただろう、つまりこの状況で追撃を仕掛けなかったとしたら……」

「其の攻撃は私達の体を蜂の巣にしていたかも知れないということですか……」


指揮官の放った其の言葉に副官は言葉を失う。

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