第964話 生まれ続ける脅威

「データを複製って……何時の間にそこまで……」


シレットが困惑しているのはコンスタリオがさらっとそう告げたからではない、このデータベースに仕掛られていたセキュリティーは明らかに従来のタウンの先を行っており、それを解除するにはそれだけでも相当な時間を要すると思われるレベルのものであったからだ。


「まあ、これが居住していた者の特権ってところかしらね」


コンスタリオは又してもさらっとそう言ってのけるが、実際そうなのだろう。

コンスタリオがこのデータベースを調べる際、明らかにショートカットと思わしきルートを経由していたのをシレットとモイスははっきりと目撃していた。


「さて、データベースの入手は済んだ事だし、次は反応があった場所に行ってみましょう」


コンスタリオがそう言って椅子から立ち上がるとシレットとモイスは黙ってそれに付いて行く。

そのままエレベーターに乗り、迷う事無く進むコンスタリオ、そしてそれに続くシレットとモイス、だがここまできても尚妨害が入らない事が逆に三人に警戒心を抱かせる。

そして反応があった場所の前に来るとコンスタリオは


「二人共、警戒はしておいてくれる?何しろ中にある物があるものなだけにね……」


とシレットとモイスに警戒心を促す。

その様子は先程までの何処かあっけらかんとした、しかし内心で何かを感じている様子とは異なる真剣な重みのある発言であった。

その発言を重く見たのか、シレットとモイスは


「はい」


とだけ告げて頷き、手に武器や魔術の詠唱を即座に出来る様な構えをとった状態で扉を開ける。

だが予想に反して三人はすんなりと中に入る事が出来、そこには電気の付いていない暗い空間が広がっていた。


「部屋は暗いけど、何かが待ち構えている雰囲気という訳でも無いわね……罠の可能性もあるけど、明かりを付けた方が良いわね」


コンスタリオはそう告げると壁にある電源を入れ、部屋の明かりを点ける。

そして照らされた部屋の中には何らかの装置を制御するシステムらしき機器が一面に広がっており、更にモニターとは異なる部屋の窓も見える。


「これは……制御装置?だとするとこの窓から見えるのは!!」


何処か確信を持った口調で窓に接近していくモイス、そしてその窓を覗き込むとそこには生産プラントで次々と生産されている兵器が肉眼で確認出来た。


「あの兵器は……昨日データベースに向かってきた兵器と同じ物だ……やはりここは兵器の生産プラントなのか……」


その事実を確認したモイスはそう呟く。

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