第961話 コンスタリオの葛藤
「指導者……」
「ええ、貴方達も軍に入った後の訓練は受けたでしょう、私だってそう、只場所が違うというだけでね」
シレットの呟きに対し、コンスタリオは何処か軽い口調で返すものの、シレットはそれが逆にコンスタリオの内心に潜む葛藤を映し出しているように感じられた。
そしてその言葉に対する
「だけど自室まで指導者が入ってくるっていうのは……」
というモイスの発言に対しても
「どこに出しても恥ずかしくない存在にしたかったって事なのかもね」
とやはり軽口で返す、しかしらしくない軽口は逆にその内心の葛藤を表すかもしれないという事をコンスタリオは把握しているのだろうか?
モイスはそう思わずには居られなかった、その軽口が如何にも演じているかの様に見えたからである。
「さあ、横になりましょう。
この部屋は防衛装置も備えているから寝込みを襲われたとしても体制を立てる時間は稼げるわ」
そう言ってコンスタリオは迷う事なくベッドの一つに潜り込み、その手元にあったスイッチを起動させる。
すると扉が閉まり同時に何かが作動する音が微かではあるが聞こえてくる。
恐らくそれがコンスタリオの言っている防衛装置の起動音なのだろう、そしてスムーズにベッドに入っている所を見る辺り、そのベッドがコンスタリオが使っていたベッドであるという事はシレットもモイスも容易に想像がついた。
だが二人がそれ以上の事をコンスタリオに聞くことはなく、ほぼ言われるままに近くにあったベッドにそれぞれ入っていく。
ベッドが複数あった事も又、コンスタリオの内心の複雑さを証明している様に二人には思えた。
もしベッドに一人ずつ就寝していたのだとすれば指導者は複数人居る事になるからだ、更にその指導者も又裏側組織の息がかかっていたのではないか……そう思わずにも居られなかった。
様々な考えが三人の内心を駆け巡るが当然それだけの複雑な問題の回答が直ぐに出てくる筈も無く、そのまま目を瞑り、眠りへとその身を落としていく。
三人が再び目を開けたのは翌日になり、窓から日が差し込んで来てからであった、物々しい装置で守られた部屋でありながら光はしっかりと差し込む、その光景も又シレットとモイスには何処か異質に感じられた。
「二人共、目は覚めた?」
コンスタリオがそう声を掛けると
「ええ、覚めました」
とモイスとシレットは声を揃えて返答する。
そのまま携帯していた軍隊用の非常食料を口にし、扉を開けて兵器の不在を確認してから再び昨日のデータルームへと戻る。
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