第897話 発掘資料の示す時間

そのままシレット、コンスタリオも部屋に置かれている資料を手に取り、その中身をパラパラと捲り始める。


「この資料によればこのエリアの調査が最初に開始されたのは今から数十年も前に遡るわね……それだけ長い間調査されていたにしては発掘作業が進んでいない気もするけど……」


資料を手にしたコンスタリオがそう呟くとモイスとシレットが驚いた表情を浮かべる。


「えっ!?どういう事ですか?このエリアの発掘が数十年前から行われていたなんて……」


二人が驚くのも無理はない、外に置かれていた発掘機材は明らかに少なくとも数ヶ月前までは使用されていた形跡があり、且つその機器は今の防衛部隊で用いられている物と大きく違わないからである。

だが防衛部隊の技術が数十年もの間全く進歩していない訳が無い、モイスもシレットも其の事は自身の身で知っている事である。


「ええ、確かに発掘の技術が数十年もの間全く進歩していないとは考えにくい。

となると考えられるのは、此処の発掘が一時中断し、その後再開された際に機材を更新したというケースね」


二人の驚いた顔に対し、コンスタリオはそう結論付ける。


「つまり、此処の発掘部隊は何かの理由で一度離れたということですか?」

「ええ、此処に配属されていたのが裏部隊であるのなら何か特殊な任務でこのエリアを離れた事は十分考えられるわ。

そして、其の任務を終えて戻ってきたのか、それとも別の部隊が配属されたのかはわからないけど、その時期はどうやら資料の内容から特定出来そうね」


シレットの問いかけに対し、コンスタリオはこう答える。

だがモイスとシレットには最初の説明はともかく、資料の内容から特定出来るという発言については其の理由が何故なのか分からなかった。


「何故、資料の内容から其処まで特定出来ると断言出来る?」


モイスがコンスタリオに其の疑問を問いかけるとコンスタリオは


「其の理由は其処にあるわ」


といって資料が入っている棚の一部を指差す、だが其の指さされた先を見てもモイスとシレットにはただ単に資料が入っているだけにしか見えなかった。


「あの資料がどうかしたのか?」


モイスが更に問いかけるとコンスタリオは


「あの資料の収納機材、私が指さしている左右で使われている物が違うわ。

左側よりも右側の方が現在私達が使っている物と同じか、少なくともより近い外見になっている。

微妙な違いだけど、普段から使っているとそういう所が分かるのよね」


と其の根拠を説明する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る