第869話 もう一つの先へ

「ええ、その結果としてこうして知る事が出来たし、対策を練る事も出来る。

少なくともブントがこのやり方に手を染める前に対処しないと厄介な事になるわ。

最悪の場合、世界全体がブントによって汚染されるかもしれない」

「その方法に手を出していないって事は、ブントもまだここは調査出来ていなかったのかもしれないね。

既に手を出していたのならとっくにそうしてきている筈、あるいはそう出来ない理由があるのかもしれないけど」


星峰と天之御の発言はブントの悪意の拡散を予感させつつも一方でそれを食い止める事が出来るかもしれないという希望も含んだものであった。

その言葉に対し、他の一同は頼もしさを内心で抱く。


「これ以上のデータはここでは入手出来ないわね……このデータの分散は流石というべきなのか、それとも内部抗争でもしていたのか……何れにしろ、これ以上のデータを得る為には他の部屋に行くしか無いわね」


星峰がこう告げると一同はそのまま席を立ち、入り口から元来た道を戻っていく。

意外な事に今回は兵器や兵士の迎撃、妨害を受ける事は無かった。

それだけこの部屋を洗浄にするのは避けたかったということなのか、それとも……

そのことについて当然一同は疑念を抱くものの、同時にそれについての答えも既に出ている、少なくともそんな気持ちにはなっていたが故にそれを敢えて口に出す事はしなかった。

そして一番初めの分岐通路まで戻ってくると一同は今度は反対側の通路の先へと向かっていく。

すると早々に一同の前に迎撃用の兵器がその姿を表す。

その数は様々であり、この施設で開発されていた兵器が如何に多彩な物であるかを伺わせる。


「今度は兵器か……どうやらこっちの通路の先では兵器を製造しているみたいだね」


涙名がそう口にすると星峰は


「さっきの通路の先が何れも兵士や人造生命に関係する部屋だった事を踏まえるとその可能性は高いと言えるわね。

そして、そうであれば当然……」


と言葉を続けて身構え


「放置は出来ない!!

狐妖術……赤色の破砕」


と言って両手から赤い波動を放ち、目の前に現れた兵器達に当てて吹き飛ばし、その衝撃で一掃する。


「もし今の兵器が他の兵器にデータを転送する機能を持っているとしたら、あまり此方の手の内を見せ続けるのは得策とは言えない。

可能な限り短期決戦を挑む必要があるよ」


兵器を吹き飛ばした星峰を見て天之御はこう告げ、他の一同も首を縦に振って頷く。

その後、またしても道が分岐する通路に辿り着く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る