第858話 硝子の守護

「この施設……ここから攻撃すれば破壊出来そうな気がしねえか?」


八咫はそう言うと


「黒羽の五月雨!!」


と言って施設に向かって黒羽を飛ばすが、その羽根は施設に着弾する直前に弾かれてしまう。


「何!?羽が弾かれた?」

「恐らくは透明な壁で防御しているのでしょうね、どの様な壁なのかは分からないけど、やっぱりそうそう簡単には破壊させてくれないわね」


八咫の攻撃が弾かれたのを見て星峰はこう分析する。

だが八咫が攻撃したことについて咎める声は上がらなかった、それだけ一同の怒りが深いという事なのだろう。


「中に入っていくしか無いって事か……まあ、そうしないとデータも入手出来ないし、仕方のないことかもしれないね」


天之御がそう言うと一同は不本意という表情を浮かべながらも施設内部に突入していく。

ガラスの天井の様に外から見ている分には明白、だが実際は見えない壁で覆われている施設は外から見るだけでなく、中から外を見る分にも異様に映る。


「外部から身を護る透明な壁……異質としか言い様がありませんね。

一体どんな技術や魔術、妖術を用いているのか……先史遺産の技術といえど、驚異と同時に好奇心も湧いてきそうです」


空狐がそう告げるのは自身の血筋も又先史遺産の技術に関わっていたが故だろうか、その発言に対し特に異質だという意見は上がらない。

空狐の性格を分かっているが為なのか、それともそうした発言に気付かない程怒りが渦巻いているのか、その何方でもないのか、それすらも重い空気に包まれて分からない。


「……どうやらお出迎えが来たみたいだよ……」


天之御がそう告げると同時に一同は立ち止まり、交戦体制を取る。

その言葉通り、直後に目の前に現れたのは外から見えていた兵器の集団であった。

その数はやはりリアルタイムで生産されているが故なのか多く、かつバリエーションも豊かである。


「これだけの数をしかも何種類も揃えるとは……やはり此の施設は放置するには危険すぎるね」


涙名がそう言うと同時に天之御は


「うん、生命の存在が確認出来ないって事は少なくとも全てがブントの手中に落ちているというわけではないんだろうけど、その点を差し引いても十二分に驚異となりえる遺跡だよここは。

だからこそ、今出来る事をしなきゃいけない!!魔王妖術……鋼の旋風!!」


と叫び、眼の前に銀色の風を巻き起こして兵器を吹き飛ばすと同時にその全身を切り刻み、瞬く間にその全てを残骸にする。

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