第854話 沈んでいた呪い
「つっ……あれは擬態兵器か!!」
八咫がそう言いながら兵器の攻撃を回避するとすかさず
「黒羽吹雪!!」
と言い、部屋にその名の通り黒羽の吹雪を巻き起こしてその羽根で擬態兵器を埋もれさせ、その機能を停止させる。
「擬態兵器も存在していたなんてね、しかも見てよこれ」
涙名はそう言うと擬態兵器の放ってきた弾丸が被弾した壁を指差す。
そこは壁が貫かれており、完全に穴が空いていた。
だが星峰は
「ええ、今まで交戦してきた擬態兵器より明らかに弾丸の威力が強いわね、発射出力が高いのか、それとも弾丸自体がより高性能な物を用いているのか……
何れにしてもこれまで交戦してきた擬態兵器より殺傷能力が高いのは確実ね。
だけどそれ以上に気になるのは……」
と言って改めてその壁を見つめる。
「うん……分かっては居るけど、それが意味するものは……」
星峰が言いたい事は全員最初から分かっていた、正確に言えば涙名が壁の穴を指摘した時点で涙名も含め全員が気付いていた。
その壁に空いた穴から水が漏れ出しているのには。
「壁の穴から水が漏れ出ている……そしてこの通路の様子、つまりここは……」
「ええ、海底……少なくとも海の中ということになるわ。
此の通路は海の中に建造されている、となると恐らくこの先にある遺跡も……」
天之御が水について触れると星峰も話を続け、此の通路が海の中を通っている事をその言葉にして出す。
「海底にある先史遺産の遺跡は初めてだよ……これまでの歴史を顧みてもね。
最も、単に調査が行われていなかっただけと言ってしまえばそうなんだけど……」
そう口にする天之御の言葉には何処か不甲斐無さが感じられた、恐らくは今回の一件まで海底を調査するという視点を持っていなかったことに対する自己嫌悪だろう。
周囲の面々もそれを察しはしていたが、敢えてそれに触れることも慰める様な言葉をかけることもしない。
天之御の性格上それは殆ど意味を成さない事を知っているからである。
「なら、これから調査の対象を広げていけばいいだけの話よ、もしかしたら出所不明の技術は海底に眠っているのかもしれない。
その手掛かりを得る事が出来た、そうは考えられない?」
星峰がそう口にすると天之御は
「まあ、そういう考え方もあるね。
ならその第一歩としてこの先の遺跡を調査しよう」
と顔を上げて視線を前にし、先人を切って進んでいく。
その様子は何処か空元気を出しているようにも見えるものの、少なくとも星峰はその姿を見て少し安堵した表情を浮かべていた。
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