第797話 それぞれの絡まる思惑

「彼等も突入してきたようですね……さて、急がないと」


モニターの電源を入れた人族はそう呟くと後から入ってきた二人を連れてその部屋から去っていく。

その直後に兵士は


「な……何故、こんな事に……」


と呟きながら意識を完全に失って倒れ込む。

その言葉は信じられない、あるいは起こりえないという様な意味合いが感じられた。

一方、この思わぬ自体により追撃部隊を差し向けられるという事態を逃れた八咫は部屋の外に出て周囲を見渡す。するとこの扉以外にもう一つ矢が刺さっている扉があることに気付く。


「あれも……本物なのか?」


疑心暗鬼に陥りつつも他に選択肢はなく、八咫はその扉に近付いていく。

そして扉のノブに手をかけると扉はあっけなく回り、それが本物である事は証明された、だがその目の前に広がっている空間は薄暗い通路であり、先程の部屋とは又違う不気味さを感じるには十分すぎるものであった。


「この通路もどこかに続いてるっていうのか……」


八咫はそう呟くと足を前に踏み出し、その先へと進んでいく。

最も、それ以外の選択肢は一切合切存在していなかったが。

一方、別の場所で戦っていた天之御と星峰、そして彼等に協力する人族部隊の面々も又、その場所の奥にある施設内へ突入しようとしていた。


「ここから先に何があるのか……恐らくはろくでもないものだろうけど」

「それは今に始まったことじゃないわ、そんな事より気になるのは……」

「あの要塞をどうしてこのタイミングで、しかも踏み絵までさせて起動する必要があったのか……最初からそこは疑問だったよ」


的施設の入口だというのに星峰と天之御は良い意味でペースを崩さない、それに苛立ったのかそこに人族部隊の用いている兵器の集団が現れる。


「人族部隊の兵器……まだ残っていたんですね!!」


天之御たちに協力する人族がそう告げると星峰は


「残っていたというよりも、此処で今作り出されているのかもしれないわね」


と返答し、この施設の中に兵器生産プラントが存在している可能性を示唆する。

あくまでそれは示唆であり、いうなれば星峰の個人的な予測に過ぎないのだか自然と天之御はその星峰の発言が事実であるのではないかという確証を抱えていた。


「そうだとしたら尚の事、こんな所で手間おって入られませんね!!」


協力している人族部隊はそう言うと目の前の兵器に猛攻撃を仕掛け、兵器を瞬く間に破壊する。

その勢いのまま先へと進んでいくが、突如として星峰が


「待って……仕掛けられてる」


と何かに気付いた様な発言をする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る