第779話 岬の焦り

銃弾の嵐を飛び上がって躱した八咫はそのまま


「黒羽の五月雨!!」


を発動させ、鋭い黒羽を雨の様に降らせて兵士と兵器を貫く。

その羽は地面に突き刺さり、まだ招待を現していなかった擬態兵器も同時に貫いていた。


「やれやれ……四方八方敵だらけって訳かい。

まあ、要塞だから当然と言えば当然なんだろうが……こんな街に住みたくはないな!!」


最初の方はただ単に呆れて頂けといった雰囲気の言葉だった八咫だが最後に行くにつれてその言葉に怒りが籠る。

やはり自身の境遇から思うところがあるのだろうか。

それだけ言うと八咫はその場を後にし、先へと進んでいく。

一方、八咫とは反対側から接近していた岬は途中で幾度となく妨害に会い、未だ要塞まで辿り着けずにいた。


「正面や反対側の八咫は既に辿り着いているのに私はまだ……此方側の防御は手厚いとでもいうの?」


手にした端末から送られてくる他の戦場の戦況を見て岬は若干表情に焦りを見せる。

他の面々に後れを取っている事に負い目があるのか、それとも他に何かを感じているのかは見た目には分からないが、何か焦りを抱いているのは確かである。

それを象徴するかの様に


「岬様!!上より来ます」


という兵士の声がするまで上から飛び掛かって来る兵士に気が付かなかった。


「くっ!!こんな所で足止めを食らう訳には……」


岬はそういうと回し蹴りで飛び掛かってきた兵士の腹部を蹴り飛ばし迎撃には成功する。


「くっ、焦っては駄目……此方側に戦力が集中しているのならそれらを全て打ち倒す事が出来れば……」


兵士の迎撃に成功した後、岬はそう自分の内心に言い聞かせて焦りの対処をしようとする。

その直後、再び人族部隊が出現するが今度は率いている兵士達がすぐさま銃撃で迎撃してくれた為に敵に攻撃する隙を与える事は無く、すんなりと引き下がらせる事に成功する。

だがその直後、岬が率いている部隊の脇を掠める形で人族部隊の一部が外側に回り込んでくる。


「くっ、挟撃を仕掛けてくるつもりなの……止むを得ない、ここで休止して迎撃を……」

「いいえ、皆さんはそのまま進んで下さい!!」


迎撃の為に立ち止まろうとする岬だったが、その直後にその舞台の更に後ろから大声が響き、それと共に銃声、魔法の発動音が鳴り響く。


「え……一体何が……」


岬が困惑している所を見るとそれは魔神族部隊が行ったのではない事が伺える。

思わず背面を振り向くとそこには吹き飛ばされた兵器と人族部隊兵士、そしてその奥に別の人族部隊の兵器と兵士が存在していた。

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