第728話 それぞれの部隊に対する懸念

「助かったぜ、シレット」


モイスがシレットに感謝するとシレットは


「どう致しまして、だけど今はそれよりも……」


というと兵器が出現した階段のほうに目をやるが続けて兵器が出てくる気配は見られない。


「どうやら続けての増援は無いみたいね、今の内に前進を!!」


兵器の増援が出現しない事を確認したコンスタリオがそう大声で指示するとそれに呼応した現地部隊は輸送対象を連れて先へと進んでいく。

だがその進んだ先においてコンスタリオも想定していなかった事態が起こる。

その行く先には魔神族の部隊が待ち受けていたのだ。

視界に入ったと同時に攻撃してくる魔神族部隊に不意を突かれ、現地部隊は負傷者を多数出してしまう。


「魔神族部隊!?こんな時にどうして……しかもこんな所で……」


思わぬ遭遇に困惑するシレットだが魔神族部隊はそんな事は御構い無しにコンスタリオ小隊に対しても攻撃を仕掛けてくる。


「ちっ、今回の部隊は問答無用って訳か」


モイスはそう語ると先程充填していた弾丸を魔神族に向けて放ち、その体を撃ち貫いていく。

幸いにも幹部クラスが存在していなかったこともあり、人族側に死者は出なかったもののここで魔神族と遭遇した事は現地部隊に不安を過らせる。


「どうして魔神族部隊がここに……」

「今はそれを考えていても仕方ないわ、とにかく任務に専念しましょう」


困惑した声を上げる現地部隊に対しコンスタリオは任務に専念する様に促し、現地部隊もとりあえずそれに納得したような表情を見せる。

そしてそのまま足を進めていくがその最中モイスが


「隊長、さっきの魔神族部隊……」


と周囲からは見えない様に耳打ちする。


「私の推測でしかないけど、恐らく魔王の配下ではないわね、あれだけ大局を見据える力がある魔王が不確実な手を打つとは思えない。

ここにある技術が人族の手に渡るのを阻止したいのであればもっと早くに手を討っている筈よ、こんな際際で慌てて阻止しようとするような行動は取らない」


モイスの耳打ちに対しコンスタリオも又耳打ちで対応する。

それは魔神族に対していだけでなく、周囲にいる人族の現地部隊に対しても疑念を抱いていることの表れであった。


「つまり、あの魔神族は魔王と……」

「あるいはここにいる人族とも……なのかもしれないわね」


シレットも同じくコンスタリオに耳打ちしコンスタリオも耳打ちで返す。

傍から見ているとそれは内緒話に他ならないのだが人族部隊が気付いているようには見えない。

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