第721話 太古より渦巻く悪意

星峰や岬が見つけた資料の記述からブントが太古の昔より活動していたことが改めて浮き彫りになり、更に転移する兵器も存在していた事が証明される。

だが一同の中に芽生えていた疑念はそれだけではなくなっていた、以前より内心に抱いていた疑念がより強くなっているのを各々が確信していたからだ。

その強まった疑念を原動力に一同は更に調査を進めていく。

その甲斐があったのか、続いては涙名が


「これは……どうやら謀略は一度だけじゃなかったみたいだね」


と告げる。


「涙名、それはどういうことなの?」


先程とは逆に今度は星峰が涙名に対して問いかける、すると涙名は


「前回の交渉からおよそ五十年後、再び戦乱を終える為の交渉が行われたんだ。

但し、流石に同じポカを二度もやらかす訳には行かないから前回の警備を遥かに上回る形で警備が行われていた。

にも拘らず今回は外で人族と魔神族双方の部隊が半ば暴動に近い形で問題を引き起こし、結局それがどちらが引き起こしたのかという話になってしまって交渉は決裂。

又しても戦争状態は泥沼に陥ってしまった、そう書かれているよ」


涙名は手にした資料をそう口にしながら読み進める、仮にも一国の皇子であったが故なのか、何処か落ち着いた淡々とした読み方ではあったがそれでもやはり静かに怒りは感じられた。


「一体ブントという存在はどれだけ世界を戦乱で包みたいんだろうね、それとも戦乱を望んでいるのは……」


天之御が何処か皮肉った言い方でそう告げる者の、その皮肉には真実が秘められている可能性がある事はその場に居る全員が悟っていた。


「恐らくはその暴動も動員なんだろうね、双方が戦争を望んでいると錯覚させてその状態を継続させる為に。

只、それが行われていると言う事は相当疲弊していた筈なのに何故その暴動だけで戦争の継続を決めたのかという点は疑問が残るけど」

「確かにその点の疑問はあるね、それについては資料に記述されていない。

恐らくはブント側が独自に仕込んだ何らかの種があるんだと思うけど……」


天之御がそう続けると涙名は資料の続きに目を通すものの、そこに書かれている文章からブントの具体的な関与内容を読み取る事は出来ず、ブントによって闇に葬られてしまったと考える他無かった。


「ここまでの状況を整理するとブントは太古の戦争開始から百年ほどたった時点ですでに活動しており、尚且つその時までに転移する兵器は既に登場していた、そういう事になるね」


此処までの資料の調査結果を天之御が纏める。

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