第670話 隠されし温室

人族兵士の案内の元、天之御達が案内されたのは大きな扉の前であった、その扉の前には別の兵士が立っている、状況から見てこの兵士がこの部屋の見張り役であるというのは想像に難くなかった。


「天之御殿下!?一体どうして此処に……さっきの魔神族はブント部隊の筈では?」


天之御の姿を見たその兵士が明らかに驚いた顔でそう尋ねてくる、その回答と案内してきた兵士が目をしっかり合わせている辺り、この兵士も人族側の協力者なのはほぼ確定的であろう。


「そのブント部隊の目論見を粉砕する為にここに来たんだけど、この兵士に案内されてこの部屋に招かれたんだ、僕達も想定外だけど、ここに何があるの?」


天之御がそう尋ねると兵士は


「成程、そう言う事ですか……であればこの部屋の中を見て頂いた方が良いですね」


と告げ、その部屋の扉を開ける。

中に入ってみるとそこにはカプセルで培養される人族や魔神族が部屋中に所狭しと並べられていた。


「これは……」

「はい、ブントの兵士として培養されている人族と魔神族です。

この部屋は本来極秘個所として施設内のデータには記録されていないのですが、全くの偶然から私達はここを見つける事が出来ました」


中に入り、唖然としている空弧に対し兵士はそう説明する、その瞳はまっすぐであり、虚言を吐いている様には見えない。

それはその発言が事実である事の表れなのだろう。


「となると、ここはブントの兵士生産箇所……しかもその技術は先史遺産の技術の竜用及び応用によるもの、そんな物が隠されているとはいえ堂々とこんな所にあるという事は……」

「ええ、この辺りのエリアはブントが完全に侵食していると考えてまず間違いないと思います、そしてコンスタリオ小隊がこの辺りをうろつくのは目障りとも考える様になった」

「だけど奴等としてはコンスタリオ小隊を僕達に対する対抗馬として手中に収めたいという下心もある、故にコンスタリオ小隊を縛る事は出来ない、だからブントの襲撃を口実にこのエリアへの接近を妨害しようとした、そんな所だね」


兵士、星峰、天之御がそれぞれに自身の考えを口にする。その考えの先に見える物はブントの下心であった。


「数か月前、私と彼はこの部屋の存在を偶然発見し、直ぐ様この施設の職員にかけあってここの見張りを割り当てて頂きました。

此処の司令はブント構成員ですが、特に疑問も無く我々の提案を受けてくれましたよ」

「となると、その司令官もこの部屋の存在は把握していないか、或いは単に能無しなのか……」


兵士の発言に対し、星峰は何気に毒気づく。

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