第662話 困惑の真実

「戦乱の裏……貴方達もその言葉を、いえ、その詳細を知っているの……」


困惑した表情と内面を抱えながら、辛うじてコンスタリオは天之御にその問いかけを絞り出す。


「ああ、この世界に巻き起こっている戦乱自体、その裏の存在が引き起こしている事だからね」


コンスタリオの問いかけに対し、天之御はそう返答する、その内容は事実ではある。

だが其れを聞いたシレットは


「この世界に巻き起こっている戦乱自体、その裏の存在が引き起こしている……一体どういうことなのよ!!」


と更に取り乱したような大声を挙げ、混乱と共に睨むような目つきを天之御達に向ける。

その顔は普段の彼女からは想像出来ない程に歪んでおり、内心で受けた衝撃と困惑の大きさを物語っている様であった。


「今この世界で起こっている戦乱はその裏で私腹を肥やしている連中が対立を煽って糸を引いて引き起こしているんだ。

其れも何十、何百年という長い期間ね」


シレットの声に対し天之御はあくまで事実のみを淡々と述べる、釣られて自分まで動揺しない為という意図なのだろうか、それとも……

そうした淡々とした返しにモイスは


「そんな事を言われても……」


と不信感を露にするがそこに


「直ぐに信じられる話じゃないのは無理も無いわ。現に私も初めて聞いた時は信じられなかったもの。

でも話を聴き、自分の目で見ていく内にそれが事実であると認めざるを得なかった。

だから今は戦乱を終わらせる為の尽力を惜しまないわ」


と星峰が口を差し挟む。唐突な口の差し挟みにモイスは沈黙せざるを得なかった。


「そして突き止めたのさ、この世界に戦乱を齎し、私腹を肥やしている組織、ブントと呼ばれる集団が居る事に!!」


そう言葉を続けたのは涙名であった。


「そんな事……信じられる訳……そもそもこの戦いは双方が信じる神による聖戦の……」


何とか言い返そうとするシレットだがその言葉は何時になく歯切れが悪い、動揺がそれだけ強いと言う事なのだろう。

そんなシレットに対しコンスタリオは


「いいわ、此処までの話は百歩譲って信じてあげてもいい。

でも、だとしたらこの部屋に広がっている光景は何なの?何故人族と魔神族が同じ部屋のカプセルの中に入っているの?」


と問いかける、その言葉は信じるというその内容とは裏腹ともいえる強気な押しがあった、否、強気でなくてはいられないのだろう、これまでの自分達を根底から覆してしまう様なこの状況に対して自分を保つ為には。

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