第659話 救援の疑念

魔神族兵士を追撃してきたという人族兵士のその雰囲気に嘘は感じられない。

そう思ったのかコンスタリオは


「それは分かりました。ですが貴方方はどうして兵士を追撃する事が出来たのです?

この施設の状況を見る限り、明らかに魔神族に押されている様な印象を受けるのですが……」


と直球な質問を行う。

その質問を聞いたモイスとシレットは困惑した表情を隠せない、コンスタリオがこうした質問をする時、それは必ずと言っていい程悪い方向に物事が転がるからである。

コンスタリオの質問に対し兵士は


「それは……ここではお話し出来ません……ですが私達についてきてくださるのであればその移動先でお話します」


と濁しているともその場から離れた方がいいと忠告している様にも取れる発言をする。


「どうしてここで話せないの?どうせ話すのであれば……」


シレットがそう言いかけた直後、コンスタリオ小隊の背後から魔神族兵士が姿を現す。

それに気づいたコンスタリオがハッと背後を振り返るがそれよりも早く人族兵士が銃を構え魔神族兵士を撃ち抜く。

その動作はモイスと同等かそれ以上に隙が無い、その流れる様な動作に何処か只者ではない雰囲気をコンスタリオは感じ取るのであった。


「今の動作……明らかに何らかの訓練を受けた兵士の動きね……でもそんな兵士が居るのにどうしてここまで劣勢に追い込まれているの……」


内心の疑念を益々深めつつもコンスタリオは


「確かにここから移動した方が良さそうね、ここに居ては兵士の的にされる危険性も大いに考えられるわ」


コンスタリオはそう告げるとひとまず兵士の言葉に従いその場から移動する事を了承し、シレットとモイスも同意して一同はその場から移動していく。

兵士の案内に従い、その場から移動していくコンスタリオ小隊、その途中の通路は比較的傷や血痕が無く、まだ魔神族兵士の侵攻を受けていない様だと推測出来る。

だがその光景が逆にコンスタリオの脳裏に不安や疑念を掻き立てる。


「どうなっているの?この兵士達がこの通路から来たのだとすればどうしてこの通路は戦場になっていないの……それに……」


魔神族の侵攻を受けているにも関わらず交戦した形跡の無い通路、その光景を見たコンスタリオ小隊の脳裏には一つの嫌な、否最悪の予感が渦巻いていた。


「ここです、私達はこの部屋から皆様の所に向かいました」


通路の突き当りにある扉を前にした兵士はそうコンスタリオ小隊に告げる、その部屋に何か秘密があるのは最早コンスタリオ小隊には考えるまでも無い事であった。

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