第622話 ブエルスの秘密

そんな兵士の心境を知ってか知らずか、天之御達は奥へと進んでいく。すると兵士の言っていた通り、独房の中には眠っている……と言うよりも意識を失って倒れ込んでいるブントの神族、魔神族の兵士が多数いた。

それぞれの兵士は無造作に体を重ねており、それが睡眠ガスを発射した事を物語っている。


「酷い光景ね……赤い色が無いだけましなのかもしれないけど」


星峰が皮肉った言い方でその場を纏める、すると天之御も


「うん。その赤い色を流されない内にさっさと話を進めよう」


と同意する、だがここで涙名が


「話を進めるって言ってもどうやって?意識を失っている相手から情報を聞き出すのは……」


と方法について疑問を口にする。すると空弧が


「ここは私に任せて。方法はちゃんとあるの」


と口を挟み、それと同時に妖術を使う為の力を溜め始める。


「これは……妖術を使う為の?でも一体何の……」


同じ力を持つ筈の星峰が困惑した声を上げる、それは空弧が今使おうとしている能力を星峰も知らなかった事を意味していた。そんな星峰を横顔で見つつ空弧は


「絶対なる魂の声よ、私が問いかける言霊に応えよ!!狐妖秘術……純白の魂魄」


と言い、その体から放つ光を倒れて居る兵士達に当てる。そしてその光が収まると周囲には特に変化はなかった、だが一つだけ変化した物があった、それは空弧の顔であった。


「空弧……一体何が起こったの?」


星峰がそう問いかけると空弧は


「今の力は魂の声を話させ、そして聴く力。それも強制的にね。

生命は誰しも自分自身に対してだけは嘘をつき、誤魔化しきる事は出来ない」


と説明する。その説明を受けて星峰と涙名は先程の光が何であったのか察した様子の顔を浮かべる。


「で、どうだったの?奴等から何か情報は得られた?」


天之御が空弧に問いかける。すると空弧は


「ええ、如何やら混成部隊は全ての大陸に置いて編成場所を用意している様です。その一つがワンカーポであり、その一つだったのがここブエルス、そして他の大陸もほぼ首都或いはそれに準ずる規模の都市が編成場所になっていますね」


と天之御の問いかけに返答する。


「ブエルスで……混成部隊が編成されていた……」


その言葉を聞き、涙名は少なからずショックを受ける。その理由は自分自身が皇子としてかかわっていながら気づけなかった悔しさか、それとも……


「残念ながら事実よ。そして、ここブエルスにも地下エリアと繋がっている場所がある、それも確定事項となったわ」


非常だと分かっていながらも空弧は更なる事実を涙名に告げる。

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