第623話 アンナースの目論見

「此処に地下通路が繋がっている……」


その言葉に涙名と星峰はショックを隠し切れない、ずっとここで暮らし戦って来たのに全く気付く事が出来なかったからだ。


「ええ、その場所も特定出来たわ、今から確認しに行く?」

「いや、今は情報収集と問題の施設の対処が先だよ、このまま続けて」


確認を促す空弧に対し涙名はそう返答する、だがその返答は声こそ明確に出ている者の、明らかにショックを受けているのは隠し切れない声であった。

空弧も其れを汲み取ったのか、それ以上この件について触れる事はせず


「分かったわ、このまま情報収集を続けましょう」


とそのまま兵士からの情報収集を続ける事を告げる。

その後も空弧が光を体に吸収していき、兵士から何らかの情報を得ている事は周囲の面々も視覚的に認識する。


「やはりブントもあの施設の全てを手中に収めている訳では無い様ですね。

星峰の予測通り、この所のいい加減な兵器の襲撃は全てブント事態にも予測していない不手際が原因の様です」


空弧がそう話すと星峰は


「つまり、行先を調べようとしてトラブルを引き起こした、そういう事ね」


と自身の立てていた仮説を改めて口にする。すると空弧は


「ええ、更に言ってしまえば豊雲の言っていた様にイェニーが技術の独占と出世目当てで例の連絡通路を設置したというのも正解だったわ。

そしてイェニーの遺産からあの施設の存在を知り、ブントはそれを活用しようとしている」


と続ける。


「でもそれが予想以上に困難であり、結果として今回のいい加減な襲撃を招き、コンスタリオ小隊に疑念を抱かせた、そんなところだね」


天之御がそう予測すると空弧は


「はい。更に付け加えるならそれによってブントの中心部分にも少なからず亀裂が入っている様です。特にコンスタリオ小隊が疑念を抱いた事で彼等を自分達の側に引き入れようと考えている連中にとっては痛手となっているようです」


とコンスタリオ小隊が現在複雑な立場に置かれている事を告げる。


「コンスタリオ小隊を取り込もうとしている……やはりそう考えていたのね」


星峰がそう口にし、他の面々もブントの欲深さを改めて実感する事となる。


「となると、その実行部隊の中心はあのアンナースという少女の可能性が高いね。彼女はどうやらブント側の先史遺産捜索中心メンバーでもあるみたいだし、コンスタリオ小隊を誘導しようとしていた可能性も高い」


涙名がそう語ると星峰は若干顔を歪ませ、他の面々もその言葉に耳を奪われる。

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