第605話 槍玉の矛先

「万が一そうであったとしたら、今ここで得た情報を流すのは危険なのでは?


シレットの指摘は最もではある。隊長であるが故に少し指摘の言葉はやんわりとはしているものの、それでもその疑念はコンスタリオも十二分に承知していた。


「確かにその可能性はあるけど、もしそうなら今後オンディーズタウンからも何かしらの動きがみられる筈……それを確認出来ればそれはそれで何かしら掴めるかもしれないわ」


そう返答し、シレットとモイスに説明するコンスタリオ、だが彼女自身もその内心では


「二人の疑念も最もね……更に言ってしまえば私自身もそうなのに……何故オンディーズタウンの司令官を信じてみようと思ったのか、その点は一体……

オンディーズタウンには何かがあるというの?」


と疑念を感じていた。

三人それぞれが疑念を抱えつつも通信を切ると


「で、通信を終えた所でどうするんです?此れ以上長話をするのは……」

「ええ、今日は此処が潮時ね、そして……」

「ああ、あんな物が仕掛けられていた以上、此れ以上留まっていたら何されるか分かったもんじゃねえ」


とコンスタリオ小隊の意見が満場一致するとコンスタリオは


「もう入っていただいて構いませんよ」


と大声で告げる。すると部屋の外で待機していたベータタウン司令官たちが部屋の中に入ってくる。


「ご用件は無事にお伝えになられたのですか?」

「ええ、お陰様で。助かりました、感謝します」


司令官がコンスタリオに訪ねるとコンスタリオは明確に感謝の言葉を告げる。だがその声には何所か芝居がかっているようにも聞こえる部分がある。


「で、これからどうなさるおつもりで?」

「逸れてしまった部隊の無事も確認出来ましたので私達も帰還する事にします。急に訪れたにも関わらずここまでしていただき、誠にありがとうございます」

「いえいえ、又機会があればお会いしましょう」


コンスタリオと司令官がそう言葉を交わした後、コンスタリオ小隊はその場から移動していく。それを確認し、コンスタリオ小隊が視界から見えなくなるのを確認した後


「少々ひやりとしましたね……」


と司令官近くに居る女性が呟く。其れを聞いた司令官も


「ああ、まさかあれに気付かれるとはね……中央がこちらの戦力に取り込みたいと願っている存在だけの事はある」


と続ける。


「しかし、これで中央が言っていた彼等が私達に対して疑問を抱いている可能性はほぼ確定事項になったと認めざるを得ませんね」

「ああ、全く、中央もやってくれるよ……」


更に女性と司令官はこう続け、中央と呼ばれる部分に対して文句をつける。

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